「イノック・アーデン」テニスン

 幡谷正雄訳。「物語倶楽部」のテキストを拝読。今さらながらに初めて読みました。キャロルを訳したりしているくせに、テニスンの詩を読んだことなかったんです。

 面白かった。詩の感想にしてはヘンな言い方かもしれないけど、面白かった。

 『伊勢物語』第二十四段「あらたまの年の三年を待ちわびてただ今宵こそ新枕すれ」と、『雨月物語』「浅茅が宿」を足したものに、『ロビンソン・クルーソー』をトッピングしたような作品。これぞ古典。すべての物語のエッセンスが詰まっている。

 古い訳だから七五調で訳してあって、ともするとリズムに乗せられて意味を取り損ねるくらいの名調子。「黒白も分かぬ」と書いて「あやめもわかぬ」とか、「愛情」と書いて「なさけ」とかいう読み方が味わい深い。鏡花も読みたくなってしまった。


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