『ZOO』(2005年,日本)★★★★☆

 乙一の同名小説の映画化。原作は未読。

「カザリとヨーコ」――カザリとヨーコは双子。母親はカザリばかりをかわいがり、ヨーコを虐待。母親の精神状態が台詞だけで説明されているためまったく説得力がないのが瑕瑾。短時間の作品では仕方ないか。それとも、トラウマさえも空疎な現代人の心をこういう形で表現したのか。どうせなら「SEVEN ROOMS」の犯人像みたいに、動機とかまったく不明のままの方がよかったと思う。意味もなくただ虐待するだけ。あと、カザリとヨーコの違いをもっとはっきりつけた方がよかった。『GOTH』[bk1amazon]の夜と夕みたく。吉行和子の優しさと母親の虐待だけが印象に残って、カザリのひどさ(もしくは美しさ)があまり伝わらなかった。

「SEVEN ROOMS」――ある日突然誘拐監禁された姉弟。ほかの部屋にも監禁された女性が一人ずついた……。もっともホラーらしいホラー。五作のなかでも一番完成度が高いと思う。監禁者の姿をできるかぎり見せないでほとんど部屋の中だけで恐怖が展開していくところがものすごく怖い。

「SO-far そ・ふぁー」――両親が車で出かけ、一人で留守番の僕。ラジオから事故のニュースが流れてきた。その日から、父親と母親はお互いの姿が見えなくなってしまう……。めちゃくちゃかわいい神木隆之助クン&鈴木杏樹杉本哲太という豪華な親子陣でわかるとおり、これは演技で見せる作品。

「陽だまりの詩」――古屋兎丸キャラクターデザイン。乙一原作なのに、絵だけでなくストーリーも古屋兎丸原作かとまごうような物語だった。青年が作った少女アンドロイド。青年は彼女に少しずつこの世界のことを教えていくのだった……。青年の顔が乙一の顔(笑)。眼鏡かけてるとわかりづらいけど、写真立ての中の眼鏡はずした顔は疑いようもなく。

「ZOO」――毎日一枚ずつ摂られた死体の写真。それは元彼女の写真だった……。よくわからなかった。ネットで原作の粗筋を読んだら、映画と全然違う。動物のいない動物園というあからさまなメタファー。「あるときいっせいに動物たちが逃げ出したのかもしれない」「動物がどうやって自分で檻の鍵を開けるんだよ」「あなたは自分の入っている檻の鍵を自分で開けられるの?」(台詞うろ覚え^^;)。写真に撮られるのをいやがる彼女。写真に撮るという行為も、印画紙という檻の中に閉じ込める行為にほかならない。「だって写真になっちゃえば〜♪ あたしが古くなるじゃない♪」。「昨日と今日の写真はまったくおんなじように見えるのに、何枚も続けて見るとまるで生きているように変化していた。」(これもうろ覚え^^;)。死んでなお、写真の中で生き続ける彼女。一方彼の方は「男はあなただけじゃないのよ」という彼女の言葉によって檻に閉じ込められ続ける。

 五作に共通するテーマをしいて挙げれば「現代人の心の闇」か。(ワレながら陳腐な表現だ(汗)……。)
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ZOO

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