『ロンド』(上・下)柄澤齊(創元推理文庫)★☆☆☆☆

 内容どうこう以前に……『Q.E.D』のタタルさんといい、本書の美術館の愛称SHIP(建物が船の形をしてるから)といい館長=キャプテン(船形の建物の館長だから)といい、なんでこう頭の中だけで考えたような恥ずかしいネーミングをするかね。これならまだ清涼院流水西尾維新の方がまし。だから本格はダサいって言われるんだよ。

 というわけで冒頭でがっくり。。。言葉のセンスのない人が書いた観念小説っぽいものを読まされるのは非常につらい。

 単行本の帯には「かつて『虚無への供物』も『薔薇の名前』もその登場を同時代で迎えた人々がいたように、今、あなたは『ロンド』の登場を目の当たりにする。」とか書かれていたそうだが、『虚無』はともかく『薔薇』は違うよね。『虚無』にしたって観念とか衒学趣味とかではなく、探偵コンビから受ける印象が似ているんだと思う。

 京極夏彦『塗仏』の黒幕のような絵画が登場するわけだが、これがまたつらい。だってほとんど『リング』じゃん。幻想的だったりしていればともかく、松本清張風とでもいうべき手堅い丹念な文章には似合わない。

 美術的蘊蓄にしても、京極夏彦や『薔薇の名前』を読んで知的好奇心をくすぐられるようなわくわく感は感じられず、「ふうん」と思うくらいだった。

 木版画家さんが書いた小説だからといって一幅の絵画のように味わうべきだとは思わないが、しかし小説としてはだから何なんだとしか言いようのない作品でした。ツカレタ。。。

 実物を知る人間は数えるほどしかいない、所在不明の幻の絵画『ロンド』。交通事故死したその画家の回顧展を企画する美術館学芸員に、「ロンド」の名を冠した未知の画家の個展案内状が届いた。会場にあったのは有名な18世紀の絵画そのままの死体だった。奇怪な個展は更に続く。謎の個展を開くこの画家は誰なのか? 木口木版画の第一人者・柄澤齊、渾身のミステリ・デビュー作。(上巻裏表紙あらすじより)
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 ロンド 上 『ロンド』(上)
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 ロンド 下 『ロンド』(下)
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