「25ぬぎかへてかたみとまらぬ夏衣さてしも花のおもかげぞたつ」〜「27駒とめて袖うちはらふかげもなしさののわたりの雪の夕ぐれ」塚本邦雄(『定家百首/雪月花(抄)』(講談社文芸文庫)より)★★★☆☆

25「ぬぎかへてかたみとまらぬ夏衣さてしも花のおもかげぞたつ」

26「いくかへりなれても悲し荻原や末こすかぜのあきのゆふぐれ」

 区切れと意味の切れが一致していない「秋はぎの散り行くを野の朝露はこぼるる袖もいろぞうつろふ」の歌は、当時は「めづらしい」どころかきっと革命的だったに違いない。現代の目から見ると、「意味上の語割れ」はしているくせに三十一文字には忠実なところがかえって異様、バランスが悪く感じる。「うつろふ」という一語に、そのバランスの悪さ=不安定な移ろいやすさを込めているのだとすれば超絶の技巧である。しかしそれは穿ちすぎか。

27「駒とめて袖うちはらふかげもなしさののわたりの雪の夕ぐれ」

 「白雲のはるはかさねてたつた山をぐらの峯にはなにほふらし」の歌について、「私には凡作以外のものではなく、特に懸詞がいかにもわづらはしかつた」と断定しているのが小気味よい。やはり天才は天才というか。わたしが同じことを同じ言葉で言ってもまったく説得力がないに違いない。
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