『Classical Fantasy Within 第一話 ロケット戦闘機「秋水」』島田荘司(講談社BOX)★★★☆☆

 戦時中が舞台、子どもが語り手を務める。軍人を父に持ち、母はモンペをはかずに着物姿、いまだに軍からもらった米の飯を食べている等々のため、町内からは疎まれ恨まれている。戦時中が舞台であるため、これまで以上に日本人論が説得力を持っている点が目を惹く。とはいえあまりにもイノセント(というよりバカ?)な語り手と、何もここまで世間とずれている設定にしなくてもというほどの語り手一家の境遇のために、却ってどっちもどっちな印象を受けてしまいますが。

 最新式戦闘機「秋水」の飛行実験が始まるあたりから面白くなってきます。史実をもとにしながらも、小説ならではのショッキングな出来事が展開されます。ホラというかはったりというか、こういうところのセンスが島荘です。

 とまあここまでは戦記小説といってもいいのですが、終盤あたりから奇想が炸裂しだす。『エデンの命題』でも感じたことですが、ノンシリーズだと最後になるまで推理小説なのかファンタジーなのかわからないからドキドキする。

 戦局が風雲急を告げ、日本の降伏が濃厚となった昭和二十年。亡国の危機を打開するため、最新鋭の高速度ロケット戦闘機「秋水」の研究開発に携わる「ミツグ伯父さん」を慕い憧れる少年、「ぼく」。しかしその現実は、奇妙に、そして確実にねじれていく……。(函裏あらすじより)
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