『天に還る舟』島田荘司・小島正樹(南雲堂SKKノベルス)★★★☆☆

 あとがきも何もないので作品ができるまでの経緯も何も不明ですが、読んだ感触では、『御手洗くんの冒険』と同じように、原案・島田荘司、執筆・小島正樹という組み合わせなのかな、と感じました。

 『火刑都市』事件を解決して妻とともに休暇で秩父を訪れていた中村刑事。ところが妻の知り合いの葬儀の席で、地元の警官から故人の奇妙な死に様について聞かされる。鉄橋から吊された舟の上にまるで浮かんでいるようにして首を吊っていたというのだ。そして顔は真っ赤なペンキで塗られていた。外傷がなかったことから自殺として処理されたその事件に不審を抱いた中村は、休暇中にもかかわらず独自に聞き込みを開始する。ところが……翌日、被害者の戦友の一人がまたもや死体となって見つかった。しかも今度は、頭を鈍器で殴られた黒こげの焼死体という、明らかな殺人だった。残酷で凝った犯行の意図するところは……? 中村刑事は、宿に滞在していた海老原という青年とともに、捜査を続けるが――。

 三重の見立てというのはさすがに偶然に頼りすぎていて、何だかよくわかりません。見立て殺人やダイイング・メッセージや暗号というものの、解釈の不確かさを逆手に取ったと考えるのは穿ちすぎなのでしょうね。

 見立てが見立てであると同時にアリバイ工作にもなっていたという真相や、真犯人が特定されるきっかけになるある新事実、などは、とてもきれいに決まっていて、こういうのは個人的には大好きでした。

  


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