『ぜんまい屋の作文』金田理恵(龜鳴屋)

 装幀家によるエッセイ集。著者自装、挿絵も著者。贅沢な一冊です。

 感性という言葉で終わらせてしまうのは安易ではあるけれど、やはり光る感性が素晴らしい。

 「植物の類の色とその季節の光の具合との間には揺るぎない調和があると感じてきている。それが、秋にいちごの内側の色をした夕暮れの中を歩いた。かすかな違和感が恐ろしい。」

 「六回の夏を過ごしたシャツのボタンが一斉にとれかかった。いかにも工業製品らしくて、その妙な正直さがおかしいと思う。」

 「テナガザルは渡り歩く手を迷わない。」

 地図の水域に使われている「左傾書体」。「何を好んで、文字を右ではなく左に傾けたのか」。こういうところに気づける感覚がうらやましい。

 ぜんまい屋の作文


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