『Tales of the Long Bow』G. K. Chesterton,1925年。
連作短篇集『法螺吹き友の会』に、未訳短篇「キツネを撃った男」、邦訳単行本未収録作品「白柱荘の殺人」、同じく未収録のブラウン神父もの「ミダスの仮面」を収録。
表題作は、慣用句をわざと文字通りに解釈する地口に、社会諷刺に充ち満ちた内容とひねくれた文章という、まことチェスタトンとしか言いようのない作品でした。キャベツを帽子にする第一話「クレイン大佐のみっともない見た目」などは『有象無象を弁護する』の一篇を思わせます。註釈や解説はついているものの、やはり当時の社会状況を知っていないと難しいのですが、小難しい文章で小難しいことを話しているくせに実は駄洒落のオンパレードというチェスタトンの文章は、いつも読むたびニヤニヤしてしまいます。
「キツネを撃った男」(The Man Who Shot the Fox,1921)。ものごとの解釈の逆転した真相といい、タイトルの含意といい、非ミステリ『法螺吹き友の会』を除く三篇のなかでは、出来、インパクトともにベスト。ただし凶器に関する解釈は、チェスタトン流の逆説というよりは、新本格ミステリのようなロジックに感じました。
「白柱荘の殺人」「ミダスの仮面」は『ミステリマガジン』で既読なので今回はパスしました。
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