『嘆きの美女』柚木麻子(朝日文庫)★★★★☆

 ミステリーズ!に連載されていた「ねじまき片想い」が面白かったのでほかの作品も読んでみました。ドラマ化されていたようです。それにしてもタイトルのつけかたが上手い作家さんです。『終点のあの子』『嘆きの美女』『私にふさわしいホテル』……。

 美女たちが悩みを打ち明け合うサイト「嘆きの美女」に異様な敵愾心を燃やすブス――という導入部からは想像もつかないほど、陰湿ではありませんでした。悪口ではあっても的確にして切れのいい啖呵は、作中でも名前の出ているマツコ・デラックスにも似て、人を不快にさせない毒舌芸なので、むしろ胸のすく思いすらします。そもそも出てくる「美女」たちが気味が悪いほどのポジティブ思考なので、陰湿になりようがないのです。

 しかしながら、それにも増して意外だったのは、とにかく食べ物が美味しそう!な小説だったことです。それもスナック菓子から薬膳、ゼリーやケバブと何でもありです。食べ物だけではなく、出てくるイイ女やイイ男が本当にかっこよく見えることから考えても、毒舌芸を支えているのはしっかりとした観察眼なのだな、と得心した次第です。そしてその目の力は、耶居子の物の見方に対する信頼感だけではなく、著者の柚木さんの小説家としての目の確かさにも通ずるものだと思います。

 しかも、ポジティブな成長小説だと思っていたら、まさかの急展開。急とはいっても、導入をマクラとしてだけで終わらせず、最後にきっちり回収している展開なので、起承転結としてはまさに理想的。観察眼の確かさともども、クレバーで信頼できる作家さんだと思いました。

 ほぼ引きこもり、外見だけでなく性格も「ブス」、ネットに悪口ばかり書き連ねる耶居子。あるとき美人ばかりがブログを公開している「嘆きの美女」というHPに出会い、ある出来事をきっかけに彼女たちと同居するハメに。全女性に送る成長小説。(カバーあらすじより)

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