『パリ20区、僕たちのクラス』(Entre les murs,2008,仏)★★★★☆

 ローラン・カンテ監督。フランソワ・ベゴドーほか脚本。フランソワ・ベゴドーほか出演。

 中学校の国語教師フランソワの新学期が始まった。何かというと揚げ足を取るエスメラルダ、エスメラルダと仲の良いクンバ、ヒップホップ好きのムスリム・ラバ、ラバの友人・お調子者のブバカール、下ネタ好きで問題児のスレイマン、中国移民のウェイ、ゴス趣味のアルチュール、問題行動のせいで転校させられてきたカリブ生まれのカルル……。人種も生まれも異なる教室のなかには、文字を書くのが苦手なスレイマンや、フランス語がまだ上手く話せないウェイのような生徒もいれば、授業中に混ぜっ返してばかりのエスメラルダや、突然心を閉ざしてしまうクンバのような生徒もいる。厳格な同僚や、匙を投げたがる同僚のなか、フランソワは生徒たちと向き合ってゆく……。

 この映画を見て気になった点が二つありました。

 一つには、フランスの学級の日本とは違う点です。規律が重んじられており、さほどの内容ではなくとも規律を破る生徒には、容赦なく懲罰が待ち受けています。職員会議に生徒代表も参加して、ふざけたり、発言したりします。保護者や第三者も参加していますね。

 二つ目は欠点、と言うべきでしょうか、描かれているのが飽くまで理想像という点です。フランソワは、脱線やおふざけや文句を好き勝手にわめく生徒たちの言葉の、一つ一つと向き合って、そうした雑言を国語の授業につなげてしまいます。結果的に、不必要に抑えつけはせず猥雑な雰囲気のままで授業は継続し続けるという、「活発な授業」の様相を呈していました。教師がクレバーならこういうことも充分に可能なのでしょうが、やはり理想論だという思いはぬぐえません。実際、反抗的な態度を取り出したクンバに対し、何もアプローチしないまま、いつの間にか仲直りしています。無策なのではなく、この場合は「スルーする」というのも一つの選択肢だったのかもしれませんが……。

 とはいうものの、総じて好印象。すがすがしい映画です。「悪人」がいないですもんね。

 唐突なエンディング、無音のスタッフロール。映画が終わったという気がしません。映画の雰囲気のまま、「続き」を自分で考えたくなります。

  


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