『ヘビイチゴ・サナトリウム』ほしおさなえ(創元推理文庫)★★★★☆

 第12回鮎川賞最終候補作。

 ひらがな名前の女性作家に、少女趣味全開のタイトル――これはふわふわな小説に違いないと先入観を持っていました。いけませんね。

 古典的、といっていいほどの少女小説にして学園小説にして青春小説でした。少女たちだけの完結した世界。生き死にに直結してしまうような学校内の人間関係。事件の始まりである、謎めいた年上の少女の死。その少女と関係のあるらしい、小説家を夢見る子どもっぽい男性国語教師。……すごくぐずぐずに煮詰まってるのに、澄んでいる、独特の世界が閉じ込められていました。

 自殺なのか、殺人なのか、どちらにしても動機は何なのか。(盗作問題や噂の出所など、付随的な謎はあるものの)大きな謎は、ほぼそれだけ。こうした下世話な噂話的な謎って、謎のタイプ的にはクリスティを連想しました。そう考えるとクリスティに女性人気があるのもうなずけるなぁと思います。

 しかしそうした日常に降りかかった災難――のような様相は、結末に至って一変します。かなりページ数に残りがある段階で犯人が登場してしまうことから、まだ何かあるのだろうな、とは思っていましたが。異様なほどの操りとどんでん返し。日常どころかガチガチの本格ミステリでした。それでも国語教師・宮坂の子どもっぽさや、死んだ少女ハルカのエキセントリックなところが、それまでの間にきっちり踏まえられていたので、唐突な感じはありませんでした。

 誰の視点で進んでいるのかわかりづらいところが何か所かあって、ところどころ読みづらかったです。

 「みんな飛び下りて死んじゃった。なんでだろう?」中高一貫の女子高で、高三の生徒が屋上から墜落死した。先輩の死を不思議に思った海生は、友人の双葉と共に真相を探りはじめる。様々な噂が飛び交う中、国語教師も墜死した。小説家志望だった彼は、死んだ女生徒と小説を合作していたが、何故か死の直前に新人賞受賞を辞退していて……。すべてに一生懸命だった少女たちの物語。(カバーあらすじ)

  


防犯カメラ