『星読島に星は流れた』久住四季(創元推理文庫)★★★☆☆

 数年ごとに隕石が落ちてくるという奇跡の島セントグレース島、通称星読島。星が好きだった妻子に隕石を手向けるため、家庭訪問医の加藤盤は、高倍率のイベントに参加することにした。だが運良く隕石が見つかった直後、隕石回収業者が死体で発見され、隕石も消えていた。さらに島の通信機器は破壊されていた。

 ……という、謎めいてロマンチックな島を舞台に、閉ざされた孤島での殺人事件が起こります。

 まるで奇跡のように数年ごとに隕石が落ちてくるという設定がファンタジーなのか現実なのかによって話は変わってきます。現実なのだとすれば、真相は一つしかないでしょう。ですからそこを曖昧にしたまま話が進んでゆくのは、当然といえば当然です。そして殺人事件の謎(動機や機会など)を解く鍵が、その奇跡にあるという点が見事です。ファンタジーなのか現実なのかが明らかになるとともに事件も明らかになるという構成は優れていると思いました。

 しかしそうして明らかになった事件の裏側が、(ファンタジーではなく現実として解決された以上)、当たり前すぎる陳腐すぎるというのは否めません。著者が明らかにしているように、日本の法律ではうまくいかないというような細かい部分がよくできていることは間違いありませんが。

 ロマンス部分もあまり上手くなく余計だったと思います。

 悪くはないんだけれど、びっくりできなかったなあ、というのが感想です。

 天文学者ローウェル博士は、自分の住む孤島で毎年、天体観測の集いを開いていた。それほど天文に興味はないものの、家庭訪問医の加藤盤も参加の申し込みをしたところ、凄まじい倍率をくぐり抜け招待客のひとりとなる。この天体観測の集いへの応募が毎回驚くべき倍率になるのには、ある理由があった。滞在三日目、ひとりが死体となって海に浮かぶ。犯人は、この六人のなかにいる!(カバーあらすじ)
 

  


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