『ヴァロワ朝 フランス王朝史2』佐藤賢一(講談社現代新書)★★★★☆

 著者の最高傑作、だと思います。

 歴史的にも百年戦争という大きな節目を迎えたため、『カペー朝』と比べてもそれだけで読み物として格段に面白い。

 著者の小説にあるような余計な心理描写・人物描写がないので、読んでいる途中に停滞することなくぐんぐん読み進められます。

 賢王シャルル五世の税制改革や、父王時代からの因縁であるイギリス長弓兵との戦いなどは、賢王の賢たるところを示すエピソードで、デュ・ゲクランの出てくる『双頭の鷲』も読み返してみようかな、という気にさせられます。

 その父親である良王ジャン二世はとにかく「おひとよし」の一言に尽きます。懐が深いと言えば言えるのでしょうか、おそらく何も考えてないのでしょうが、この人もある意味ですごい人でした。

 フランソワ一世。節操がないというか信念がないというか、とにかく気分屋でやることがころころ変わります。君主としては駄目なひと、でしょうね。

 アンリ二世。二十歳年上の愛人とは驚きました。フランソワ一世の章では「愛人」としか書かれていなかったのが、アンリ七歳のときのエピソードで、いきなりディアーヌは「当時二十七歳」と書かれているものだから、一瞬読み間違いかと思ってしまいました。

 シャルル九世がそれまで四月初旬の復活祭の日だった一年の始まりを一月一日にした、というのを読んで、一瞬きょとんとなりましたが、「4月、5月……」ではなく「Avril、Mai…」だから違和感はないのか。

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