『貴婦人として死す』カーター・ディクスン/小倉多加志訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★★★

『She Died A Lady』Carter Dickson,1943年。 謎自体はものすごく単純で、行きだけで帰りのない崖の上の二つの足跡。クラフト警視が作中で疑るように、何らかのからくりがあるとしたらどう考えても第一発見者が怪しい状況です。 しかも第一発見者のリューク…

『世界名探偵倶楽部』パブロ・デ・サンティス/宮崎真紀訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★★★

『El Enigma de Paris』Pablo de Santis,2007年。 中南米の文学を普及させる目的で創設されたプラネタ−カサメリカ賞第1回受賞作。 嘘偽りない「名探偵」たち12人で構成される〈12人の名探偵〉。最高の探偵術が求められる事件は〈密室殺人〉、名探偵が開く…

『復讐法廷』ヘンリー・デンカー/中野圭二訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★★☆

『Outrage』Henry Denker,1982年。 法廷ミステリは面白い。どうしたってぶつかり合う人間ドラマがもろに表に現れるのだから、面白くないわけがない。だけど――です。ミステリ的に筋道の通ったどんでん返しが待ち受けているかというと、そんな都合のいい抜け…

『スイート・ホーム殺人事件 新訳版』クレイグ・ライス/羽田詩津子訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★★☆

名作は読み逃しちゃうと、こういう新訳みたいな機会がないとなかなか読めないので、助かります。 かわいくないガキだなあ〜(^_^)。←ほめことばです。 三人ともほとんど捜査妨害みたいなやり方で、警察を出し抜いてしまいます。推理というより証拠探しと…

『ビッグ・ボウの殺人』イズレイル・ザングウィル/吉田誠一訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆☆

『The Big Bow Mystery』Israel Zangwill,1891年。 新聞の投書にヘンな推理がいっぱい載ったり、その投書のなかにはモルグ街に敬意を表して猿が容疑者になっているものもあったり、重婚ライターの奥さん二人が刑事と元刑事それぞれの家で女中をしていて情報…

『狂犬は眠らない』ジェイムズ・グレイディ/三川基好訳(ハヤカワ文庫)★★★★★

『Mad Dogs』James Grady,2006年。 ロバート・レッドフォード主演『コンドル』の原作者による、スパイ小説――というよりは、元スパイの活躍するサスペンス珍道中である。 というのも、登場する五人の元スパイは、任務中の出来事が原因でみな狂っているのだ。…

『国境の少女』ブライアン・マギロウェイ/長野きよみ訳(ハヤカワミステリ文庫)★★★☆☆

『Borderlands』Brian McGilloway,2007年。アイルランド国境、「どちら側の警察が主導権を持つのかは、だいたいのところ、死体のあった場所か被害者の国籍によって決まる」という舞台が魅力的な作品。 ではありますが、捜査の過程でそういう特殊性が浮き彫…

『完全脱獄』ジャック・フィニイ/宇野輝雄訳(ハヤカワ文庫)★★★★☆

『The House of Numbers』Jack Finney,1956年。 『盗まれた街』の映画化に合わせて、おそらくは同じく映画化されているという理由で復刊されました。 登場人物表に書かれているのはたった五人。余計な説明はなし。アーニー・ジャーヴィスの「脱獄」という一…

『そして死の鐘が鳴る』キャサリン・エアード/高橋豊訳(ハヤカワ文庫)★★★☆☆

『His Burial Too』Catherine Aird,1973年。 『有栖川有栖の密室大図鑑』で紹介されていた未読作のうちの一作。 それなりに期待して読んだのだけれど、トリック自体はバカミスだったなあ。。。初めのうちは〈運ぶときに十二人必要なほどの石像がどうして倒…

『キラー・イン・ザ・レイン チャンドラー短篇全集1』レイモンド・チャンドラー/小鷹信光他訳(ハヤカワ文庫)

傑作選じゃなくて短篇全集なんですね、と、ちょっとびっくり。本書は六篇中四篇が『ミステリマガジン』掲載新訳だから、本誌を読んでいる人間にはあんまりお得感はない。 忙しくて本誌で読めなかった「スマートアレック・キル」と、本誌未掲載の「キラー・イ…

『カリオストロ伯爵夫人』モーリス・ルブラン/平岡敦訳(ハヤカワミステリ文庫)★★★★★

『La Comtesse de Cagliostro』Maurice Leblanc,1924年。 面白かった記憶はあったのだけれど、こんなに面白かったとは覚えてませんでした。インパクトのあるトリックや意外な犯人が登場するわけではないから、確かに具体的な面白さが記憶には残りづらいのだ…

『水晶の栓』モーリス・ルブラン/平岡敦訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★★☆

スピーディでテンポのいい、ルパンものの代表作。 第一章でいきなり事件発生。ルパンの部下が人殺し!というショッキングな冒頭から、なんとルパンが巻き込むのではなく巻き込まれ、翻弄するのではなく翻弄される。というわけで、ルパンに考えるひまも与えな…

『ガラスのなかの少女』ジェフリー・フォード/田中一江訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★★★

相変わらず、ほかの作家が書けば失笑ものになりかねない際どいネタを、めくるめくエンターテインメントに仕立て上げています。読みごたえのある文章とぐいぐい引き込む巧みなストーリーテリングが両立しているのは、最近の作家のなかでもピカ一。 早川の刊行…

『奇岩城』モーリス・ルブラン/平岡敦訳(ハヤカワ文庫)★★☆☆☆

代表作に数えられることが多いが、以前からあんまり好きな作品ではなかった。ルパンというよりボートルレが主役だからなー。このボートルレという少年が、自信家のくせに優等生的でアクがなく、かと思うと突然泣き出したりして、およそ魅力というものが感じ…

『怪盗紳士ルパン』モーリス・ルブラン/平岡敦訳(ハヤカワ文庫)★★★★☆

ミステリマガジンかどこかで、訳が違うとこうも違うのかと評価されていたので読んでみた。かなり以前の記憶を探るかぎりでは、偕成社版に比べると、大げさでクサい感じがなくなってるかな。 『Arsène Lupin, gentleman-cambrioleur』Maurice Leblanc,1907年…

『剣の八』ジョン・ディクスン・カー/加賀山卓朗訳(ハヤカワ文庫)★★☆☆☆

ハドリー警視が警視監から頼まれたのは驚くべきことだった。スタンディッシュ大佐の屋敷にポルターガイストが出たのだ。絵が床に落ち火かき棒が動き出した。宿泊中の牧師が助けを求めて祈っていると、インク壺が飛んできた。叫びを聞いて屋敷中の人間が駆け…

『マローン御難』クレイグ・ライス/山本やよい訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★☆☆☆

帯の若竹七海の惹句によると、「ビターなミントチョコレートの香り/お子様にはわかるまい、この読後感」だそうである。 お子ちゃまでした……_| ̄|○ 途中までは面白かったんだけどなぁ。ミステリとして完成度が高くなくてもぜんぜん気にしないから、ユーモア…

『はなれわざ』クリスチアナ・ブランド/宇野利泰訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆☆

ブランドといえば――? ――容疑者一同が集まってがやがやと噂話やら議論に明け暮れ、とんでもないトリックがあり、二転三転の果てに瑕瑾のない論理が展開……そんなブランドの特徴を過不足なく備えた代表作が本書です。 ところがこの本がブランドによる本格ミス…

『パンチとジュディ』カーター・ディクスン/白須清美訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆☆

結婚式前日、かつての職場、英国情報部の上司であるH・M卿に呼び出されたケンは、元ドイツ・スパイの老人の屋敷に潜入を命じられた。その老人が国際指名手配中の怪人物Lの正体を明かすと情報部に接触してきたので、真贋を確かめろというのだ。だが、屋敷でケ…

『愛国殺人』アガサ・クリスティ/加島祥造訳(ハヤカワ文庫)★★★☆☆

憂鬱な歯医者での治療を終えてひと息ついたポアロの許に、当の歯医者が自殺したとの電話が入った。しかし、なんの悩みもなさそうな彼に、自殺に徴候などまったくなかった。これは巧妙に仕掛けられた殺人なのか? マザー・グースの調べに乗って起こる連続殺人…


防犯カメラ