『新約聖書』

翻訳をする、聖書やシェイクスピアの引用がある、原文を検索、該当箇所を邦訳で調べる、というのが現在のwilderの翻訳スタイル。今はネットという便利なものがあるから、「引用」の場合だとこれでも用が足りる。 しかし誰もがカギカッコつきで「引用」してく…

『ネジ式ザゼツキー』

いまさらながらに読みました。いくら年末は忙しいからと言って、島田荘司さんの新作長篇を積ん読にしていたのはただごとではない。 最近の島田作品はタイトルが即物的だからちょっと残念、てところもあったんだけど、本書は発売予告の時からわくわくしていた…

『辞書にない「あて字」の辞典』現代言語セミナー

講談社+α文庫。 タイトル通りの辞典です。 ↓古い訳を読んで、「漁夫《すなどりびと》」とか「常緑樹《ときわぎ》」とかいうルビについつい感嘆してしまい、ぱらぱらと再読してみました。 泉鏡花は「豊肌」と書いて「ぽってり」と読ませる、だとか、志茂田景…

ハヤカワ、クリスティ文庫創刊

ハヤカワの〈大きなサイズ文庫〉といえば、『ダニエル・キイス文庫』で失敗し、『epi文庫』で成功した、という印象があるのだけれど、さて今回は――と楽しみにしていたのだが。店頭に並んでいるのを見ると……失敗だな、今回は……。 『ダ・ヴィンチ』12月号の…

「ミュージック」シオドア・スタージョン

短編集『海を失った男』より スタージョンの文体はちょっと苦手です。それはともかく。 このテーマの作品は星の数ほど書かれたけれど、〈音楽〉と結びつけたものはなかったんじゃないでしょうか。そのせいでこの作品は果てしなくリアルな社会風俗小説になっ…

『透明人間の納屋』島田荘司(講談社ミステリーランド)

「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」というのがキャッチコピー。てことはジュブナイルかあ。それに御手洗ものじゃないしなあ。 なんて思っていたのですが、書店で実物を手にとった瞬間、買おう!と決意していました。 一部布装。変形箱入り。ペ…

「探偵小説十戒」ロナルド・ノックス

古本を整理していてついつい読み耽ってしまうというお決まりのパターンで読み返してみる。 これって『空想非科学大全』じゃん。って思った。ヴァン・ダインが書いた「探偵小説二十則」てのは完全にヴァン・ダインの驕りから生まれた「〜しなさい」という〈規…

「放屁論」風來山人(平賀源内)

もともと古典は好きなのだけれど、最近は江戸に凝ってます。てなわけで風來先生。これはマジなのか最後まで洒落なのか。終わってみれば社会批判になっちゃうところがすごい。 「ニンジン飲み込み喉を詰まらす間抜けがいれば、ふぐ鍋食べて長生きをする男もい…

『半身』サラ・ウォーターズ

表紙の絵画に惹かれて買いました。有名だったんですね。澁澤が愛していたそうです。クリヴェッリ「マグダラのマリア」。 肝心の中身はというと、やや少女趣味かつ「霊感体質気味=ヒステリー」の貴婦人という語り手がどうにも馴染めませんでした。 同じ創元…

「仇討三態」菊池寛

ちくま文学の森6『思いがけない話』より 〈菊池寛〉という作家は思い込みの激しい正義漢というイメージがある。そのイメージからして、〈仇討〉というものに肯定的であるのに違いない、という先入観をもって読み進めました。 そのように読んでみると、一見…

「響き」ナボコフ

『ナボコフ短編全集 I 』より。 ひたすらかっこいい。青くて若くてセンチメンタルと言われようが、よいものはよいのだ。残酷なくらいがよいのだ。愚かなくらいでよいのだ。 「ぼくは君の背中を、君のブラウスの市松模様を見守っていた。階下のどこからか、た…

「街角の書店」ネルスン・ボンド

『幻想文学66号』より。最近、好きな(好きそうな)作品はあとに取っておくようになってしまった。この作品も雑誌を買ったのは何ヶ月も前なのだが、今頃読みました。 読み残しておいてよかった! と心から思える名作です。書かれなかった作品を売る本屋! 本…

「獲物」ピーター・フレミング

宮部みゆき編『贈る物語 Terror』の一編。「猿の手」「ゴーストハント」「人狼」は既読だったので、「オレンジは〜」に次いで二編目ということになる。 フレミングという作家は初めてだったけど、「あきれるくらいゆっくり、丹念に読んでいるのか、それとも…


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