「The Folding Doors」Marjorie Bowen,1912年。★★★★☆

フランス革命期を舞台にしたマージョリー・ボウエンの短篇。 王妃を救うという共通の目的が縁で知り合った元貴族と人妻。ホールの音楽を聴きながら、ド・ジョレはドアを開けようとした。ドアの向こうにはオルタンスが待っているはず。と、そのとき、デュロソ…

「別荘の怪事件(別墅之怪)」「頭飾りの宝石(王冕珠)」「断指団ふたたび(断指余波)」「怪しい下宿人(怪房客)」「レポート(試巻)」「地獄の扉(地獄之門)」程小青

はっきり言ってバカミスの宝庫です。「別墅之怪」★★★☆☆ 犯人はなぜ幽霊を出したのか?というのがこの手の話の眼目なのに、真相がそのまんまだということに脱力。どの話も雰囲気はいかにもホームズっぽくていいんだけどね。。。→このサイトに「拙訳」あり。 …

「The Continuing Adventures of Rocket Boy」Daryl Gregory(『F&SF』誌2004年7月号)★★★★☆

「二人称現在形」のダリル・グレゴリイの短篇。著者ホームページで読める。 子ども時代の友人の思い出と、飲んだくれの父親と虐待――だなんて書くと、いかにもアメリカの作品にありがちだし、宇宙とスペースオペラに憧れる少年というのもSFの定番です。 と…

「猫儿眼(貓兒眼)」程小青〈霍桑探案集〉★★★☆☆

中国のシャーロック・ホームズ、霍桑シリーズの一篇。まずはお馴染みホームズの推理でワトソンびっくりシーンから幕を開けます。これがまず嬉しいですね。 今回の事件は狙われた猫目石。怪盗(?)江南燕から宝石を守ってほしいと依頼された霍桑が一言、「ぼ…

「Weep Not My Wanton」A. E. Coppard(『Adam and Eve and Pinch Me』より)

丘は豚の鳴き声でやかましい。男が一人、それに男の子が歩いている。「この阿呆がきゃあ!」小柄な子どもを揺すって男は繰り返した。「阿呆んだらが! ほんに何さらすだか!」七、八歳だろう。少年は声を立てずに泣いていた。「六ペンス失くしてか。誰の世話…

「The Thought」L. P. Hartley(『The Conmplete Short Stories of L. P. Hartley』より)★★★★☆

ヘンリー・グリーンストリームの頭の中に、一つの考えが居座っていた。追い出そうと努めるのだが、日に日に頭をよぎる回数が増えてゆく。ついには三十分のあいだに二十二回も襲われるようになった。教会を訪れたのは偶然だった。散歩の途中に標識に目が留ま…

「Father Raven」A. E. Coppard(『The Collected Tales of A. E. Coppard』より)★★★★★

「Father Raven」 ――レイヴン神父は教区の住人をつれて海辺にでかけていた。ハットフォール家の子供たちが楽器を演奏している。気づくとレイヴン神父は鼓笛隊長のように先頭に立って行進していた。四十人の教区民も続いた。天国を目指して。だが天国は遠かっ…

「A Change of Ownership」L. P. Hartley(『The Complete Short Stories of L. P. Hartley』より)★★★★★

「A Change of Ownership」(1929初出,1948短篇集『The Travelling Grave』) ――自動車が走っていた。「ここかい?」ヒューバートがたずねた。「もうちょっとだよ」アーネストが答えた。家のシルエットが見えたところで車を停めた。「あの家に一人なのか?…

「Judith」A. E. Coppard(『The Collected Tales of A. E. Coppard』より)

「Judith」(1926短篇集『The Field of Mustard』) ――これは一介の庶民に対して大きな間違いを犯した貴婦人の物語である。ジュディス・リーワードの夫サー・ガリスタンはアフリカに狩猟旅行に行っていた。ジュディスがサイクリング中に足をくじたときに通り…

「Apples」「Night Fears」(『The Complete Short Stories of L. P. Hartley』より)

「Apples」(1954『The White Wand』より) ――「ティムおじさん、ティムおじさん!」ルパートの声がした。「りんごがほしいんだ」木をゆすってみたけれど、まだ熟していないりんごは落ちては来なかった。「一か月もすれば熟すよ」「今ほしいんだい!」ルパー…

『Lay On, Mac Duff!』Charlotte Armstrong(ZEBRA MYSTERY)★★★★☆

わたしベッシー・ギボンは20歳、もうすぐ結婚する。だけど二月にあれが起こったときにはまだ19歳だったのだ。両親を亡くし、ニュー・ヨークのおじに引き取られることになったわたしを、駅に迎えに来たのはヒュー・ミラーという30歳くらいの青年だった。おじ…

「My Hundredth Tale」「Ring the Bell of Heaven」「Nixey's Harlequin」A.E.Coppard

「My Hundredth Tale」★★★☆☆ コッパード自身を思わせる小説家ジョン・フリンが問わず語りに語る、幼い頃の思い出、自分にとっての書くという行為、恋、恋、恋。『The Collected Tales of A. E. Coppard』収録作のうち、「The Cherry Tree」「The Presser」に…

「The Presser」A.E.Coppard(コッパード) ★★★★☆

十歳のジョニー・フリンは母元を離れて伯母に預けられていた。貧乏なジョニーは学校にも行かず仕立屋で働いている。仕立屋にはサルキーというアイロンがけ職人がいた。ほかの従業員は女ばかり。ジョニーはヘレン・スミザースさんのことが好きだった。店主の…

「The Old Venerable」A. E. Coppard(『The Collected Tales of A.E.Coppard』より)★★★★☆

オールド・ディックは森はずれに住む浮浪者。自分のロバを持つのが夢だった。今までは狩猟管理人とも“共存共栄”してきた。管理人家の子犬をもらい受けて、ロバの代わりに可愛がってもいた。だが新しい管理人がきてすべては変わってしまった。 コッパードの短…

「The Ballet Gril」A. E. Coppard ★★★★★

靴屋の小僧シンプキンズは大学に集金に向かったのだが、からかわれてたらい回しに。ようやくファズ教授に引き合わされたが、教授はお金のことは取り合わず奇天烈な話ばかりを聞かせるのだった。戸惑いながらも、大学で勉強しないかという教授の言葉に心動か…

「The Poor Man」A. E. Coppard

「Poor Man」とは「貧乏な男」であり「心貧しき男」であり「哀れな男」のこと。 コッパードの複雑な宗教観がよくあらわれている作品。 牧師の忠告にもかかわらず、飲酒も賭事も密猟もやめようとしない男はやがて……。 心から忠告をする牧師に向かって、「おれ…

「The Cherry Tree」A. E. Coppard(1922)

これぞコッパード! 出だしがいいよね。町は騒ぎに包まれていた。誰もが不安になった。数週間前に殺人があったばかり――叫びが聞こえた。「このガキんちょ!」機関車好きのおじさんというちょっと変わった人物が登場するのもコッパードっぽくていい。ハートフ…

「The Higgler」A. E. Coppard

コッパードの代表作の一つ。ということで期待して読んだんだけれど、ちょっとイメージと違いました。わりと普通の恋愛小説。 行商人のウィトロウは、あるとき荒野の一軒家を訪れた。そこには美しい母娘が住んでいた。娘に魅かれたウィトロウは、婚約者のある…

「INSPIRATION!」Joyce Carol Oates

〈霊感〉、とはいいつつも、完全な無から創り出されるものなどない、ということです。まずはマン・レイらシュールレアリストを引き合いに出して〈霊感〉を定義。そしていよいよ作家の〈霊感〉に――。 ヘンリー・ジェイムズは本の虫でもインドア派でも何でもな…

「Running And Writing」Joyce Carol Oates

あたしは走ることで書くことのプレッシャーやもやもやをふっきっています、子供のころ外で走り回って遊んだことが今の作品に役立ってます。――というだけなら普通のエッセイなんだけれど……自分のことだけじゃなく、コールリッジもシェリーもディケンズもホイ…

「Demon」Joyce Carol Oates

この文章を書こうとして、〈五芳星〉という単語を変換できないことに気づく。むむむ……『広辞苑』にも載ってないのか。とーぜん〈六芳星〉もなし。そんなマイナーな単語かな? 水木しげる『悪魔くん』のイメージがあるから『ファウスト』原典にも魔方陣は出て…

「First Loves」Joyce Carol Oates

「From "Jabberwocky" To "After Apple Picking"」という副題がついてます。"The Faith Of A Writer"(『一作家の信念』)というタイトルのエッセイ集より。紹介文を読むと、若き作家へのオーツからのアドヴァイス云々……みたいなことが書かれていたので、こ…

「■」Joyce Carol Oates

ほんとはタイトルは黒い長方形なんですが、変換できん。 タイトルにひかれて読んでみた。幼い日の記憶によぎる黒い影■――読者の前にはそれが黒い影=伏字という形で示される。読んでいる人間にも、語り手と同様に目の前に■が現われる、というわけ。伏字をも文…

「The Hero As Werwolf」Gene Wolfe

人狼(狼男)とは怪物ではなく一種族なのである。という設定からして人狼というより吸血鬼っぽいのであります。前半部分、被害者の女性(死人)との会話なんてもろ吸血鬼小説です。後半の悲劇的タッチも狼男よりも吸血鬼にこそふさわしい。なんか耽美ーだ。 …

「The Poisoned Kiss」Joyce Carol Oates

〈ショート・ショート〉とは言っても日本におけるショート・ショートとは違って、別に〈落ちのある作品〉という意味ではない。けど。 本当に短い。本にしたら2ページくらいだろか。どことなくトマス・バーク「オッターモール氏の手」と乱歩「赤い部屋」を合…

「Alien Stones」Gene Wolfe

ジーン・ウルフ「異邦の小石」。 異なる文化の接触を描いたこの作品、「Alien」とはもちろん「異星人の」なのですが、ここはやはり「外国人の」→「異なる文化の」と捉えたい。 〈サルを檻に入れて観察しようとした科学者が、観察穴から覗いたとき向こうに見…


防犯カメラ