『日本文学100年の名作 第1巻1914-1923 夢見る部屋』池内紀他編(新潮文庫)★★★☆☆

「父親」荒畑寒村(1915)★★★☆☆ ――久しく満州を放浪して居た孝次は、帰って来たと思ったら、一室に閉じ籠ったまま翌日から口もきかなかった。そんな孝次が結婚している長野へと、父親は向かっていた。何でも社会主義の新聞を出すのに、田舎の方が保証金が安…

『大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー』有栖川有栖ほか(光文社文庫)★★★☆☆

「本と謎の日々」有栖川有栖 ★★★☆☆ ――店長は「読書なんかしないよ」と言いながら、本の知識もすごく広い。接客業のくせに明るい笑顔を作れない人だが、推理力は鋭い。「本が傷んでいた方がいい」というお客さんや、同じ本を二冊買って返品するときに「気をつ…

『怪奇文学大山脈 西洋近代名作選 I 19世紀再興篇』荒俣宏編(東京創元社)★★★★☆

「まえがき」荒俣宏 平井呈一の思い出と、氏の海外怪奇文学の受容、本書の編纂意図、海外雑誌に見る怪奇小説の歴史、その日本受容史。 第I部 ドイツロマン派の大いなる影響:亡霊の騎士と妖怪の花嫁「レノーレ」ゴットフリート・アウグスト・ビュルガー/南…

『近藤史恵リクエスト! ペットのアンソロジー』我孫子武丸他(光文社文庫)★★★☆☆

作家による「リクエスト!」シリーズ第二弾。「ババアと駄犬と私」森奈津子 ★★★☆☆ ――篤江ちゃんと呼ばれる近所の老婆は、行動が現代社会向けに洗練されていない「田舎者」である。犬は庭を横断するワイヤーの端から端まで移動することができるので、それを理…

『坂木司リクエスト! 和菓子のアンソロジー』北村薫他(光文社文庫)★★★☆☆

和菓子小説が少ない現状を嘆く(?)『和菓子のアン』の作者発案による書き下ろしアンソロジーの文庫化。 「空の春告鳥」坂木司 ★★☆☆☆ ――駅弁目当ての母に連れられデパートを訪れたアンちゃんは、やはり和菓子が気になりのぞいてみると。店員に向かって「い…

『世界堂書店』米澤穂信編(文春文庫)★★★★☆

「源氏の君の最後の恋」マルグリット・ユルスナール/多田智満子訳(Le Dernier amour du prince Genghi,Marguerite Yourcenar,1938)★★★★☆ ――紫の上に先立たれ、五十路にさしかかった源氏の君は、間もなく視力が衰えてくるのに気づいた。昔の恋人が、追憶…

『教えたくなる名短篇』北村薫・宮部みゆき編(ちくま文庫)★★★☆☆

名短篇シリーズ第6弾。第一部「青い手紙」アルバート・ペイスン・ターヒューン/各務三郎訳(The Blue Paper,Albert Payson Terhune,1941)★★★★☆ ――腕ききのアメリカ青年ジョン・セーンは、社用でフランスに出張することになった。ある女性がバッグから青…

『読まずにいられぬ名短篇』北村薫・宮部みゆき編(ちくま文庫)★★★☆☆

名短篇シリーズ第三期・五冊目です。第一部「類人猿(抄)」「しこまれた動物(抄)」(『動物のぞき』より)幸田文 ★★★☆☆ ――これは、歩きつきまでがゴリラに似てきたと云われて、そうかなと頷いているほど、ゴリラを手がけ馴れてきた人の話である。ある日、…

『S-Fマガジン700 国内篇』大森望編(ハヤカワSF文庫)★★☆☆☆

書籍初収録を多数収録。「緑の果て」手塚治虫(1963)★★★☆☆ ――最終戦争によって全滅した地球から、からくも逃げのびたわれわれは、密雲の下にある草ばかりの星に着陸した。 なぜ擬態するのか――?という謎に対する解答が、極めて合理的で、単なる「奇想」では…

『S-Fマガジン700 海外篇』山岸真編(ハヤカワSF文庫)★★★☆☆

SFマガジン700号記念のアンソロジー海外篇。著者短篇集に未収録の作品(単行本未収録作品も含む)が選ばれています。敢えて超有名作家のものばかり選んだという方針が残念。 「遭難者」アーサー・C・クラーク/小隅黎訳(Castaway,Arthur C. Clarke,194…

『ミステリマガジン700 国内篇』日下三蔵編(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★☆☆☆

700号記念のアンソロジー国内篇。海外篇とは違い、単行本未収録のみで構成されているわけではありません。――が、縛りがゆるいにもかかわらず、日本作家の方が作風の幅が狭いと感じました。 「寒中水泳」結城昌治(1959)★★★☆☆ ――溺れ死んだミノルは自殺で…

『ミステリマガジン700 海外篇』杉江松恋編(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆☆

『ミステリマガジン』700号を記念して編まれたアンソロジー海外篇。過去に『ミステリマガジン』に掲載された作品のなかから選んだもの。すべて単行本未収録作。 バラエティに富んでいてそこが魅力ではあるものの、出来から言えばB級集でした。 「決定的…

『リテラリーゴシック・イン・ジャパン 文学的ゴシック作品選』高原英理編(ちくま文庫)★★★★★

高原英理による「リテラリーゴシック」作品選。「リテラリーゴシック」については編者による宣言を読んでいただくとして、新たな試みの提示ということで、単なる傑作選というよりはゴスな特徴を捉えた作品集という趣もあります。 「リテラリーゴシック宣言」…

『書物愛 日本篇』紀田順一郎編(創元ライブラリ)★★★☆☆

書物がテーマのアンソロジー、日本篇。「悪魔祈祷書」夢野久作(1936)★★★★☆ ――いらっしゃいまし。雨で御座いますナア……古本屋なんてところにはタチの悪いお客もずいぶん御座いますよ。この間コンナ本がありましたよ……創世記のブッ付けだけは本物の聖書です…

『日本幻想文学大全3 日本幻想文学事典』東雅夫編(ちくま文庫)★★★★☆

タイトルに「事典」と銘打たれているものの、読んで楽しい作品でした。「読み物としても」というレベルではなく、読み物そのもの。 第一部の「古典ガイダンス」などは完全に編年体の書評集・エッセイ集となっています。第二部「作家クロニクル」とも合わせて…

『もっと厭な物語』文藝春秋編(文春文庫)★★★☆☆

アンソロジー『厭な物語』の続編。個人的にはいわゆる「イヤミス」にはまったく興味がないのだけれど、アンソロジー好きなので購入。未読のものだけ読みました。「『夢十夜』より 第三夜」夏目漱石(1908)「私の仕事を邪魔する隣人たちに関する報告書」エド…

『早稲田文学』2015年冬【世界文学ケモノ道 ぼくたちはなぜ動かずにいられないのか?】

「望遠鏡」ダニーラ・ダヴィドフ/秋草俊一郎訳(Телескоп,Danila Davydov,2012)★★★★☆ ――イペリマンはついていた。爆発はバスの乗客を鏖しにした。ひとり、彼をのぞいて。爆発で目が見えなかったが、行けるところまで行かなくては。鶏の鳴き声が聞こえて…

『怪奇小説日和 黄金時代傑作選』西崎憲編訳(ちくま文庫)★★★★★

先に出た『短篇小説日和』の姉妹編。こちらは『怪奇小説の世紀』全3巻からのチョイス及び『書物の王国15 奇跡』から一篇及び新訳四篇から成ります。「墓を愛した少年」フィッツ=ジェイムズ・オブライエン(The Child Who Loved a Grave,Fitz-James O'Brien…

『栞子さんの本棚 ビブリオ古書堂セレクトブック』夏目漱石他(角川文庫)

シリーズのファンではないので単にアンソロジーとして購入したのですが、掘り出し物は見つかりませんでした。 漱石『それから』、フォークナー『サンクチュアリ』、国枝史郎『蔦葛木曾棧』、ル・グイン『ふたり物語』、クロフツ『フローテ公園の殺人』は、長…

『日本幻想文学大全 幻視の系譜』東雅夫編(ちくま文庫)★★★★☆

日本幻想文学大全の第二巻。主に怪奇寄りだった第一巻に対し、幻想寄りの作品集です。「松風」観阿弥・世阿弥/野上豊一郎編訳(室町時代) ――あの松は古へ、行平の中納言、此の所へ御下向なり、松風村雨と申す、二人の蜑女を御寵愛なされ候、即ちその二人の…

『日本幻想文学大全 幻妖の水脈《みお》』東雅夫編(ちくま文庫)★★★★★

2012年に刊行された『世界幻想文学大全』の日本篇。『世界』とは違い、三部作の先陣を切る評論篇は存在せず、代わりに『事典』が第三巻として刊行されています。「序」澁澤龍彦(1985) 青銅社版『日本幻想文学大全』序文。図らずも、日本の作家と海外の作家…

『時を生きる種族 ファンタスティック時間SF傑作選』ロバート・F・ヤング、フリッツ・ライバー他/中村融編(創元SF文庫)★★★☆☆

すべてが書籍初収録の、『時の娘 ロマンティック時間SF傑作選』に続く、時間SFアンソロジー第二弾。 「真鍮の都」ロバート・F・ヤング/山田順子訳(The City of Brass,Robert F. Young,1965)★★☆☆☆ ――ビリングスは定期的に時間を逆行して歴史的重要…

『書物の王国3 王侯』須永朝彦編(国書刊行会)★★★★☆

「サロメ」ギヨーム・アポリネール/堀口大學訳(Salomé,Guillaume Apollinaire,1905)★★★★★ ――もう一度ジャン・バプチストを微笑させる為になら/王よ 妾《わたし》は熾天使《セラヒイン》より巧みに踊りませう/母よ あなたは何故におさびしいのです/………

『厭な物語』アガサ・クリスティー他(文春文庫)★★★☆☆

「崖っぷち」アガサ・クリスティー/中村妙子訳(The Edge,Agatha Christie,1927)★★★☆☆ ――ジェラルドはクレアと幼馴染みで、いずれもっと親密になると思われていた。だからヴィヴィアンという若い女性と結婚すると聞いて村中が驚いた。ある日街に出たクレ…

『世界幻想文学大全 幻想小説神髄』東雅夫編(ちくま文庫)★★★★★

怪奇編『怪奇小説精華』に続く、幻想編。こちらも既読の作品以外を読みました。「天堂より神の不在を告げる死せるキリストの言葉」ジャン・パウル/池田信雄訳(Rede des toten Christus vom Weltgebäude herab, daß kein Gott sei,Jean Pauls,1796)★★★★★…

『MONKEY モンキー』vol.3【特集 こわい絵本】

「GHOST GOES IN THE DOOR」JON KLASSEN★★★★★「まぶたのある生きものは」ジョン・クラッセン・絵/小川洋子・文★★★★★ ――まぶたのある生きものは/一種類の世界しか見られない。/だからもし、すぐ隣に座る君に/話し掛けなかったとしても許してほしい。 文章…

『世界幻想文学大全 怪奇小説精華』東雅夫編(ちくま文庫)★★★★★

飽くまで基本図書という方針なので既読の著名作が多くを占めます。「文体」へのこだわりゆえ名訳が集められていますが、その名訳自体が古典だったりするため、やっぱり既読だったりします。――というわけで未読のものや内容を忘れたものを中心に読んでいます…

『こわい部屋 謎のギャラリー』北村薫編(ちくま文庫)★★★★☆

先に出た『謎の部屋』に続いて、一篇+一対談追加の増補版。 例によって追加作品スイーニイ「価値の問題」と、内容を忘れていた作品を読み直しました。「価値の問題」C・L・スイーニイ/田中小実昌訳(A Question of Values,C. L. Sweeney Jr.)★★★☆☆ ――…

『桜庭一樹選 スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎007』日本推理作家協会編(講談社文庫)★★★☆☆

桜庭一樹選のアンソロジーかと思い何も考えずに購入したのですが、よくよく序文を読むと、選定の対象は講談社で出している年刊傑作選三十年分のみ。しかも『謎001』から数えて19*0年、*1年、*2年……と順番に来て、7番目の本書は76・86・96年発行の三冊のみか…

『南から来た男 ホラー短編集2』金原瑞人編訳(岩波少年文庫)★★★★☆

「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」エドガー・アラン・ポー原作/金原瑞人翻案(The Narrative of Arthur Gordon Pym of Nantucket,Edgar Allan Poe/Kanehara Mizuhito,1838/2013)★★★☆☆ ――ぼくはリチャード。高一で文芸部。リアリテ…


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