「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」エドガー・アラン・ポー原作/金原瑞人翻案(The Narrative of Arthur Gordon Pym of Nantucket,Edgar Allan Poe/Kanehara Mizuhito,1838/2013)★★★☆☆ ――ぼくはリチャード。高一で文芸部。リアリテ…
以前にマガジンハウス〜新潮文庫から出ていたアンソロジーの増補版。 ジョン・P・マクナイト「小鳥の歌声」一篇と、それについての宮部みゆきとの対談が追加されています。新収録の「小鳥の歌声」と、内容を忘れていた作品を読みました。 「小鳥の歌声」ジ…
「サラゴサ手稿 第五十三日」ヤン・ポトツキ/工藤幸雄訳(Manuscrit trouvé à Saragosse,Jan Potocki,1804)★★★★☆ ――わしは「決闘」で分団長を殺した。聖金曜日のことじゃ。その日から、毎週金曜日の夜になると分団長の夢を見た。「それがしの剣を故郷の…
金原瑞人による編集ももちろんのこと、外国の児童文学の挿絵を模したと思しき佐竹美保の扉絵も素晴らしい。 「こまっちゃった」エドガー・アラン・ポー原作/金原瑞人翻案(The Scythe of Time/A Predicament,Edgar Allan Poe,1838/1845)★★★★☆ ――あたし、…
ジェラール・クランによるフランスSFアンソロジー第3弾。60年代後半編。「Avis aux directeurs de jardins zoologiques」Gérard Klein(動物園園長への忠告,ジェラール・クラン,1969)★★★★☆ ――子どもが象に落花生をあげようとしていたので抱っこしてあ…
第9回と第10回は『メフィスト』で読んでいたので、それ以降を読みました。 http://d.hatena.ne.jp/doshin/20100421 http://d.hatena.ne.jp/doshin/20100422 山田風太郎は『誰にも出来る殺人』『太陽黒点』『十三角関係』『夜よりほかに聴くものなし』が面白…
「殺人は難しい」貫井徳郎 ★★★☆☆ ――拓馬が浮気をしているのではないかという疑いに駆られて携帯をチェックすると、ミホから何通ものメールが届いていた。 テレビドラマ前提なのに、敢えてこういう叙述ものっぽい作品にするとは、ドラマ版も見てみたい気にさ…
「ヘベはジャリを殺す」ブライアン・エヴンソン(Hébé kills Jarry,Brian Evenson,1994) ――ジャリのまぶたを縫いあわせてしまうと、ヘベはどうしていいのかわからなくなった。 一発目からリアルにグロい。感情のない人たちなのに、殺すことに対する快感と…
「序論」クリス・ボルディック/下楠昌哉訳 ゴシックの系譜を「ゴート族」にまで遡って定義しようと試みたもので、「ゴシック」小説というときの、中世(的なるもの)に対するアンビバレントな感情を明らかにしていて、これはこれで非常に説得力がありました…
内容に異同があるとはいえ再刊本なので、読んだことのある話が多い。「恐ろしき、悲惨きわまる中世のロマンス」マーク・トウェイン/大久保博訳「女か虎か」F・R・ストックトン/紀田順一郎訳「三日月刀の督励官」F・R・ストックトン/紀田順一郎訳 「女…
「進々堂世界一周 戻り橋と悲願花」島田荘司 ★★☆☆☆ ――彼岸花を見て、御手洗さんがぼくに聞かせてくれた。戦争中に日本人に非道い目に遭わされた韓国人の話だった。彼岸花の球根には毒がある。ビョンホン少年は姉を乱暴したササゲを殺そうとしたが……。 学生の…
若手作家による書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー。パズルふうの前半から始まり、ミステリふうの後半に至ります。 「お届け先には不思議を添えて」似鳥鶏 ★★☆☆☆ ――OBの福本さんつてで映像研究会のVHSテープを業者にDVDにしてもらうことになった。だが…
SFはともかくファンタスチカとはなんぞや?ということになりますが、SF・ファンタジー・幻想小説その他いろいろすべて引っくるめた非リアリズム系の作品だと思えば、当たらずとも遠からず、でしょうか? 編者は例としてレム、エリアーデ、カフカ、チャペ…
この本でしか読めない作品というのがいくつかあって、そのなかではマンビー「霧の中での遭遇」、レファニュ「ロッホ・ギア物語」がよかった。 「霧の中での遭遇」A・N・L・マンビー/井出弘之訳(An Encounter in the Mist,A. N. L. Munby,1949)★★★★☆ …
1976年発行。ジェラール・クランによるフランスSFアンソロジーの第二弾(60年代前半編)。ぐっとアメリカSF風の作品が増えて面白くなりました。 「Préface」Gérard Klein(序文,ジェラール・クラン) 60年代前半というのはフランスSFにとって、黄金の…
大阪圭吉目当てで購入。「猟奇商人」城昌幸 ★★★☆☆ ――「今晩は……お見受けしたところ、大変、御退屈そうですね……それで居乍ら、スリル、刺戟と云ったものを求めていらっしゃる……そこで、どうです? 一つ、面白い事を経験なさる気はありませんか?」 いかにもシ…
文豪怪談傑作選も、これにて完結のようです。「来訪者」永井荷風 ★★★☆☆ ――その頃頻々としてわたくしを訪問する二人の青年文士があった。木場は蜀山人の狂歌でその集には収載せられていないものを編輯したいと言い、白井は三代目種彦にならった高畠轉々堂主人…
「たそがれ」「月夜」鈴木三重吉 ★★★★☆ ――私を探していらしったの? 今裏の庭へ出ていたところです。栗の木から、蜘蛛が糸に伝って水に下りました。夕方に蜘蛛が水の上へ下りると屹度だれかが遠くへ行くのだといいます。別れが悪いからと思って、黙っていら…
「砂漠の戦い」ホセ・エミリオ・パチェーコ/安藤哲行訳(La Batallas en el Desierto,José Emilio Pacheco)★★★★☆ 娼婦と罵られるようなお妾さんを、そうとは知らずに恋してしまったために、周りから性的に早熟な危険人物だとレッテルを貼られる少年の物語…
フランスSFのアンソロジー。フランスのSF――といってもピンと来ません。調べてみても終末ものや幻想小説ばかりで本格的なものがあまりなさそうなので、実際に作品を読んでみることにしました。ガイド本や通史からは抜け落ちてしまう作家の良作が読めるの…
みすず書房からも怪奇小説とフェミニズムの作品集が出ていましたが、本書は「狼女」に絞った分だけかなり無理が来ており、ことジェンダーという観点からはこじつけも目立ちます。 「イーナ」マンリー・バニスター(Eena,Manly Banister,1947)★★★☆☆ ――短編…
東編集長の幻妖ブックブログで紹介されていた祖父江本です。祖父江氏やりたい放題。 巻頭言が菌に浸食されています。本文用紙が多種多様で、なかには薄くてめくりづらい(というか破れてしまいそうで気を遣う)ものまであります。本文組も斜めから逆さまから…
「闇の中の接吻」モーリス・ルヴェル(Le baiser dans la nuit,Maurice Level) ――恋愛のもつれから女に硫酸をかけられ、失明したアンリ。医者や兄は気休めを言うが、助からないのはわかっていた。今日は裁判の日だ。傷の具合を明らかにすれば女の有罪は確…
「いついたるねん」オガツカヅオ。ん? 「いついたるねん」って、むかし他誌で連載されていた作品ですよね。もしかすると近々単行本化されるのでしょうか。オリジナルを読んだことがないので、今回の作品が第0話的なエピソードなのか、リメイクなのか、まさ…
「南部高速道路」フリオ・コルタサル/木村榮一訳(La autopista del sur,Julio Cortázar)★★★★★ ――変わったこともなかってので、警察がこの渋滞を解消してくれるまで技師は車の中で待つことにした。2HPには二人の尼僧が乗っていて、プジョー203の夫…
ほとんど内容を忘れていたので久々に再読。さすがに何度も読んでいる「猿の手」「炎天」は今回はパスしましたが。「幽霊屋敷」ブルワー・リットン(The Haunters and the Haunted,Bulywer Litton,1857)★★★☆☆ ――「幽霊屋敷なら、かねがね一度泊まってみた…
「春ときつねとパンの耳」オオタガキフミ 京都よしなごとシリーズの第4話。今回はパンの耳が大好きな笹屋さんがメインです。バイト先のパン屋さんから、おじいちゃんのところに紙袋を届けることになった笹屋さんですが、道に迷ってしまい……。 「少年ファラ…
『37の短篇』からのポケミス化第二弾。既読のものは今回はいくつかパスしました。今回パスした「魔の森の家」と「ジェミニイ・クリケット事件」(ただしわたしはイギリス版の方が好み)が双璧でしょうか。 「うぶな心が張り裂ける」クレイグ・ライス/小笠原…
『ドラキュラ』以前の古典・吸血鬼映画・現代の吸血鬼作品から選りすぐった吸血鬼譚アンソロジー。 「はじめに」ピーター・ヘイニング/風間賢二訳 「プレリュード――ドラキュラ城の崩壊」ブラム・ストーカー/風間賢二 『ドラキュラ』オリジナル原稿からカッ…
「リズロ氏の奇妙な思い出」(Etrange souvenir de M. Liserot)★★★☆☆ ――その絵を見たリズロ氏は、描かれている風景に見覚えがあるように感じた。その場所を探し当て、車で向かったところ……(自動車事故で敢えなく死亡)。 「歌姫」(La cantarice)★★★☆☆ ――…