『トラベル・ミステリー聖地巡礼』佳多山大地(双葉文庫)★★☆☆☆

『トラベル・ミステリー聖地巡礼』佳多山大地(双葉文庫) 名作トラベル・ミステリーの現場を訪れ、現地に則して作品を紹介しつつ、作品の現代的意義などでまとめた紀行書評です。 好きな評論家であり、編者を務めた『線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和…

『皇帝と拳銃と』倉知淳(創元推理文庫)★☆☆☆☆

『皇帝と拳銃と』倉知淳(創元推理文庫) 『Emperor and Gun』2017年。「運命の銀輪」(2009)★☆☆☆☆ ――伊庭は凶器の金槌を振り降ろした。友人であり仕事のパートナーでもあった和喜多。四季杜忍がこんな形で解消とはな……。自転車の隠し場所を目指すと、ホー…

『放課後探偵団2 書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー』青崎有吾・斜線堂有紀ほか(創元推理文庫)★★☆☆☆

『放課後探偵団2 書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー』青崎有吾・斜線堂有紀ほか(創元推理文庫) 『Highschool Detectives II』2020年。 新鋭による学園ミステリ『放課後探偵団』、10年ぶりの第2弾です。ほとんどが未読の作家でした。第一集とは違い、…

『法月綸太郎の冒険』法月綸太郎(講談社文庫)★★★☆☆

『法月綸太郎の冒険』法月綸太郎(講談社文庫)「死刑囚パズル」(1992)★★★★☆ ――有明省二の死刑執行日だった。非番だった中里刑務官は怪我をした同僚に代わって松山所長に呼び出された。松山は死刑囚へのはなむけとして、自分のポケットから最後の一服を勧…

『ドミノ in 上海』恩田陸(角川書店)★★★★☆

『ドミノ in 上海』恩田陸(角川書店) 文字通りドミノ倒しのように幾多の登場人物がパタパタと運命に押し倒され、やがて結末に向かってゆく名作『ドミノ』の続編です。『ドミノ』の連載開始が2000年なのでほぼ20年ぶりの新作となりますが、20年後に突然刊行…

『線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編〉』佳多山大地編(双葉文庫)★★★☆☆

『線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編〉』佳多山大地編(双葉文庫) 同じ双葉文庫から『トラベル・ミステリー聖地巡礼』を出していることからも、鉄道ミステリ好きなことが窺える佳多山大地氏による、国内傑作選です。埋もれた名作ではなく、「大…

『雪旅籠』戸田義長(創元推理文庫)★★★☆☆

『雪旅籠』戸田義長(創元推理文庫) 『The Casebook of Detective Toda Sozaemon vol.2』2020年。 鮎川賞候補作『恋牡丹』の姉妹編。前作のその後の物語ではなく、前作各話の間を埋める八篇の作品集ということで、続編ではなく姉妹編ということのようです。…

『孤島の来訪者』方丈貴恵(東京創元社)★★★☆☆

『孤島の来訪者』方丈貴恵(東京創元社) 帯には「『時空旅行者の砂時計』に連なるシリーズ第2弾」とあるので、あれの続編とはどういうことなのかと不思議に思ったのですが、シリーズ第2弾とは続編という意味ではなく、前作の事件当事者だった竜泉家の親戚…

『さむけ』ロス・マクドナルド/小笠原豊樹訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆☆

『さむけ』ロス・マクドナルド/小笠原豊樹訳(ハヤカワ・ミステリ文庫) 『The Chill』Ross Macdonald,1964年。 裁判所に証人として出廷したアーチャーは、傍聴席にいたアレックスという青年から声をかけられる。結婚したばかりの妻ドリーが結婚初日に姿を…

『モリアーティ秘録(上・下)』キム・ニューマン/北原尚彦訳(創元推理文庫)★★★☆☆

『モリアーティ秘録(上・下)』キム・ニューマン/北原尚彦訳(創元推理文庫) 『Professor Moriarty: the Hound of the D'Urbervilles』Kim Newman,2011年。 タイトルからわかる通り、モリアーティ側を主役に据えたホームズ・パスティーシュです。前半は…

『探偵は友人ではない』川澄浩平(東京創元社)★★☆☆☆

『探偵は友人ではない』川澄浩平(東京創元社) 不登校の少年と幼なじみの中学生を中心とした日常の謎と瑞々しい感性が印象深かったデビュー作『探偵は教室にいない』の続編です。ですが、どうしちゃったの……というくらいに出来が悪くなっていました。正確に…

『犯罪者書館アレクサンドリア~殺人鬼はパピルスの森にいる~』八重野統摩(メディアワークス文庫)★★★☆☆

『犯罪者書館アレクサンドリア~殺人鬼はパピルスの森にいる~』八重野統摩(メディアワークス文庫) 日常系を得意としてきた著者による第三作目は、裏社会(というより架空世界)を舞台にした謎解きものです。 父親の残した六千万円の借金のかたに身柄を買…

『パリ警視庁迷宮捜査班―魅惑の南仏殺人ツアー―』ソフィー・エナフ/山本知子・山田文訳(早川書房ポケミス1960)★★★★☆

『パリ警視庁迷宮捜査班―魅惑の南仏殺人ツアー―』ソフィー・エナフ/山本知子・山田文訳(早川書房ポケミス1960) 『Rester groupés』Sophie Hénaff,2016年。 パリ警視庁迷宮捜査班シリーズ第二作です。ユーモアミステリみたいな副題はどうにかならなかった…

『星降り山荘の殺人』倉知淳(講談社文庫)★★☆☆☆

『星降り山荘の殺人』倉知淳(講談社文庫) 各章の冒頭に著者の説明書きがあり、それが一種の読者への挑戦のようになっていました。ここに伏線があります、とか、この人は犯人ではありません、とか。そして当然のごとく、それが【ネタバレ*1】にもなっていま…

『不安な童話』恩田陸(新潮文庫)★★★★☆

『不安な童話』恩田陸(新潮文庫) 二十五年前に夭逝した画家で童話作家の高槻倫子の展覧会。語り手の万由子は絵を見て既視感を覚え、自分が刺し殺される幻覚を見て気を失ってしまいます。 絵を見て知らないはずの記憶が甦ってくるという、クリスティを髣髴…

『短編ミステリの二百年 1』モーム、フォークナー他/小森収編(創元推理文庫)★★★★☆

『短編ミステリの二百年 1』モーム、フォークナー他/小森収編(創元推理文庫) 『The Long History of Mystery Short Stories vol.1』2019年。 江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集(世界短編傑作集)』の続編とも姉妹編とも補遺編とも言うべきアンソロジー…

『悪魔のような女』ボアロー、ナルスジャック/北村太郎訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆☆

『悪魔のような女』ボアロー、ナルスジャック/北村太郎訳(ハヤカワ・ミステリ文庫) 『Celle qui n'était plus』Boileau-Narcejac,1952年。 映画『悪魔のような女』の原作。シャロン・ストーンによるリメイク版に合わせての文庫化だったようで、表紙や袖…

『アイネクライネナハトムジーク』伊坂幸太郎(幻冬舎文庫)★★★★☆

『アイネクライネナハトムジーク』伊坂幸太郎(幻冬舎文庫) 恋愛を中心とした、各短篇に共通する人物の登場する連作短篇集です。 「アイネクライネ」(2007)★★☆☆☆ ――僕が今どきネットではなく街頭アンケートをおこなっているのは、奥さんと娘さんに逃げら…

『驚愕遊園地 日本ベストミステリー選集』日本推理作家協会編(光文社文庫)★★★☆☆

『驚愕遊園地 日本ベストミステリー選集』日本推理作家協会編(光文社文庫) 2010~2013年のあいだに発表されたミステリー短篇のなかから選ばれたアンソロジー。麻耶雄嵩による木更津もの「おみくじと紙切れ」目当てで購入しました。作家自選(の二作から編…

『敗者の告白』深木章子(角川文庫)★★☆☆☆

『敗者の告白』深木章子(角川文庫) 解説にもあるとおり、一人【ネタバレ*1】でした。この仕掛けは大がかりであればあるだけ無理が出てきますね。原典は短篇だからこそのスマートさなのだと思います。さすがに【ネタバレ*2】がいないと危なっかしくて実現は…

『本と幸せ』北村薫(新潮社)★★★☆☆

『本と幸せ』北村薫(新潮社)★★★☆☆ 自作朗読CD付き。 各種媒体に発表された短めの書評が中心となっているので、通常のエッセイ集だと思って読むと統一感もないし、内容的に物足りなさを感じる文章もありました。 それはそれとして。 北村薫の文章をいつか…

『バスカヴィル家の犬』コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫)★★★☆☆

『バスカヴィル家の犬』コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫) 『The Hound of the Baskervilles』Arthur Conan Doyle,1901年。 ドイルが「最後の事件」でホームズを殺してから「空家の冒険」で復活するまでのあいだに書かれた長篇作品で、「最後の事件」以…

『プラ・バロック』結城充考(光文社文庫)★★★☆☆

『プラ・バロック』結城充考(光文社文庫) 親本は2009年初刊。2008年度の日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。 創元SF文庫から出ている『躯体上の翼』が面白かったので遡って読んでみました。 喉を割かれて殺されていた殺人現場に臨場した機動捜査隊のク…

『戦時大捜査網』岡田秀文(東京創元社)★★★★☆

『戦時大捜査網』岡田秀文(東京創元社)★★★★☆ 昭和十九年十一月、B29爆撃機による三度目の空襲に東京が見舞われた直後、隅田川沿いの倉庫で猟奇死体が見つかった。腹を割かれ内臓を引き出され、胃の内容物が持ち去られていた。死体が男装した女性のものだっ…

『推理は一日二時間まで』霧舎巧(光文社)★★☆☆☆

『推理は一日二時間まで』霧舎巧(光文社) 霧舎巧の現在のところ最新作、なのかな。(コスプレゆえのトリックを除けば)設定の面白さが活かされていないし、いくら日常の謎とはいえみみっちい真相が多いのもがっかりでした。 「推理は一日二時間まで」(201…

『シャーロック・ホームズの思い出』アーサー・コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫)★★★☆☆

『シャーロック・ホームズの思い出』アーサー・コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫) 『The Memoirs of Sherlock Holmes』Arthur Conan Doyle,1893年。 ホームズものの第二短篇集。 「白銀号事件」(The Silver Blaze,1892)★★☆☆☆ ――名馬白銀号が厩舎から…

『米澤穂信と古典部』米澤穂信(角川書店)★★★★☆

『米澤穂信と古典部』米澤穂信(角川書店) 「〈古典部〉シリーズ15年のあゆみ」 例えば「九マイルは遠すぎる」や「十三号独房の問題」ならすぐにわかるのですが、「やるべきことなら手短に」が「チェスタトンのような逆説のつもりで書いたかな」と言われる…

『向日葵は見ていた』西本秋(双葉文庫)★★★★☆

『向日葵は見ていた』西本秋(双葉文庫) 『Clytie was seeing』2010年。 物語は二つのパートから成っています。 博物館に勤める加納里名は、次の特別展のアイデアを探しに図書館に行き、印象的な写真集を目にします。『クリュティエは見ていた』と題された…

『バルーン・タウンの手品師』松尾由美(創元推理文庫)★★★☆☆

『バルーン・タウンの手品師』松尾由美(創元推理文庫) 『A Magician in Ballon Town』2000年。 『バルーン・タウンの殺人』に続くシリーズ2作目。英題は「Balloon」の誤植かと思いましたが、フランス語やオランダ語では「Ballon」であるようです。 「バル…

『小鳥を愛した容疑者』大倉崇裕(講談社文庫)★★★☆☆

『小鳥を愛した容疑者』大倉崇裕(講談社文庫) 警視庁いきもの係シリーズ第一作。 「小鳥を愛した容疑者」(2009)★★★★☆ ――重傷を負った捜査一課の須藤警部補は、退院後に内勤を薦められたが、現場復帰を望んだため、リハビリという名目で閑職をあてがわれ…


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