『世界を売った男』陳浩基/玉田誠訳(文春文庫)★★★★☆

『世界を売った男』陳浩基/玉田誠訳(文春文庫) 『遗忘・刑警』陈浩基,2011年。 今や『13・67』『ディオゲネス変奏曲』ですっかり著名となった香港出身の作家による、長篇デビュー作であり、第2回島田荘司推理小説賞受賞作でもあります。 原題は『記憶喪…

『パリのアパルトマン』ギヨーム・ミュッソ/吉田恒雄訳(集英社文庫)★★★☆☆

『パリのアパルトマン』ギヨーム・ミュッソ/吉田恒雄訳(集英社文庫) 『Un appartement à Paris』Guillaume Musso,2017年。 フランスで一番売れている作家だそうで、確かに面白さは一級品です。 劇作家の男性と元刑事の女性が手違いから同じ家を借りてし…

『サンリオ男子 俺たちの冬休み』静月遠火(メディアワークス文庫)★★★☆☆

『サンリオ男子 俺たちの冬休み』静月遠火(メディアワークス文庫) サンリオ好きのイケメン男子が登場する女子向けアニメの小説版、らしい。 『パララバ』『ボクらのキセキ』『真夏の日の夢』『R&R』の静月遠火が担当していることからわかる通り、当然の…

『ガラスの麒麟』加納朋子(講談社文庫)★☆☆☆☆

『ガラスの麒麟』加納朋子(講談社文庫) 悪意や死や心の傷が扱われているにもかかわらず、深くは掘り下げられず、善意で安易にごまかしていると感じました。著者の作品のなかではわりと初期に当たる作品で、新境地に挑んだものの扱いきれずにそれまでの作風…

『いまさら翼といわれても』米澤穂信(角川文庫)★★★★★

『いまさら翼といわれても』米澤穂信(角川文庫) 『Last seen bearing』2016年。 「箱の中の欠落」(2016)★★★☆☆ ――生徒会長選挙で投票用紙が生徒数より四十枚多かった。投票箱を運んだ一年生が選挙管理委員長から理不尽に疑われ叱責されているのを見て、里…

『鏡は横にひび割れて』アガサ・クリスティー/橋本福夫訳(ハヤカワ・クリスティー文庫)★★★★★

『鏡は横にひび割れて』アガサ・クリスティー/橋本福夫訳(ハヤカワ・クリスティー文庫) 『The Mirror Crack'd from Side to Side』Agatha Christie,1962年。 タイトルはテニスン「シャロットの姫君」より。作中の女優が衝撃を受けたときの表情を形容した…

『月曜日の水玉模様』加納朋子(集英社文庫)★★☆☆☆

『月曜日の水玉模様』加納朋子(集英社文庫)「月曜日の水玉模様」(1995)★★☆☆☆ ――いつも電車で見かける青年は、スーツとネクタイを決まったサイクルで組み合わせていた。以前までは早い駅で降りていた青年が同じ駅で降りるようになり、会社の近くでも見か…

『日時計』クリストファー・ランドン/丸谷才一訳(創元推理文庫)★★★☆☆

『日時計』クリストファー・ランドン/丸谷才一訳(創元推理文庫) 『The Shadow of Time』Christopher Landon,1957年。 誘拐犯から送られてきた被害者の写真に写っている影から居所を突き止めるというあらすじだけは知っていたのですが、実際に読んでみる…

『陽気なギャングは三つ数えろ』伊坂幸太郎(祥伝社文庫)★★★★☆

『陽気なギャングは三つ数えろ』伊坂幸太郎(祥伝社文庫) 『A cheerful gang Count three.』2015年。 陽気なギャングシリーズの第三作です。 シリーズを読むのは始めてですがまったく問題はありませんでした。それぞれ得意な能力を持つ四人のアウトローとい…

『虚構推理 スリーピング・マーダー』城平京(講談社タイガ)★★★★☆

『虚構推理 スリーピング・マーダー』城平京(講談社タイガ) 『Invented inference Sleeping Murder』2019年。 高校生のころの岩永琴子がミステリ研究会に勧誘されるという「岩永琴子は高校生だった」、六花を追って自殺者の続くアパートを訪れる「六花ふた…

『ひとりで歩く女』ヘレン・マクロイ/宮脇孝雄訳(創元推理文庫)★★★★☆

『ひとりで歩く女』ヘレン・マクロイ/宮脇孝雄訳(創元推理文庫) 『She Walks Alone(Wish Yous Were Dead)』Helen McCloy,1948年。 誰かがわたしを殺そうとしています――という一文から始まる手記。 西インド諸島に滞在していた語り手は、いとこのルパー…

『白い僧院の殺人』カーター・ディクスン/高沢治訳(創元推理文庫)★★☆☆☆

『白い僧院の殺人』カーター・ディクスン/高沢治訳(創元推理文庫) 『The White Priory Murders』Carter Dickson,1934年。 新訳を機に再読しました。 カー/ディクスンの作品には、トリックだけは覚えているものも多いのですが、本書もそのひとつでした。…

『虚構推理短編集 岩永琴子の出現』城平京(講談社タイガ)★★★★☆

『虚構推理短編集 岩永琴子の出現』城平京(講談社タイガ) 小説家としては超寡作家の著者が『虚構推理 鋼人七瀬』を刊行したのが2011年。それが2018年になって突然続編が刊行されました。文庫版にはあとがきの類がいっさいないのですが、そのあたりの事情は…

『恋牡丹』戸田義長(創元推理文庫)★★★★☆

『恋牡丹』戸田義長(創元推理文庫) 『The Casebook of Detective Toda Sozaemon』2018年。 第27回鮎川哲也賞最終候補作。英題はさしずめ『同心戸田惣左衛門捕物帳』でしょうか。現代においてはベタ過ぎる恋愛観を、江戸時代を舞台にした大河ドラマに移植す…

『ふたりの距離の概算』米澤穂信(角川文庫)★★★★☆

『ふたりの距離の概算』米澤穂信(角川文庫) 『It walks by past』2010年。 入部希望者はなぜ千反田に怒り入部を取りやめたのか――マラソン大会の最中に奉太郎が走りながら時系列に沿って回想し、実行委員の里志、追い抜いてゆく伊原、千反田に一つずつ質問…

『戦場のコックたち』深緑野分(創元推理文庫)★★★★☆

『Armed with Skillets』2015年。 世間の波に押されるようにして従軍した主人公ティム・コールは、幼い言動からキッドと呼ばれてからかわれていました。味音痴のコック、エド・グリーンバーグからその食いっぷりを見込まれ、もともと料理に興味のあったティ…

『ルピナス探偵団の憂愁』津原泰水(創元推理文庫)★★★★☆

『The Melancholy of Lupinus Detective』2007年。 『ルピナス探偵団の当惑』の続編です。『当惑』から数年後、探偵団の一人である摩耶の葬儀という衝撃的な場面から幕を開けます。探偵の最後の事件を描いた作品は過去にもいくつもありましたが、文字通り最…

『罪と祈り』貫井徳郎(実業之日本社)★★★★☆

2017~2019年連載。2019年刊行。 元警官の濱仲辰司が溺死体で発見され、頭には殴られた痕があった。事件を担当するのは、実の父親の死後、辰司が父親同然に世話し、辰司に憧れて刑事になった芦原賢剛だった。正義漢が強く、絵に描いたような下町のお巡りさん…

『遠まわりする雛』米澤穂信(角川文庫)★★★☆☆

『Little birds can remember』2007年。 古典部シリーズ第四作は初の短篇集。すべて奉太郎の一人称に戻っています。英題はクリスティ『象は忘れない』のもじりですね。 「やるべきことなら手短に」(2007)★★★☆☆ ――里志からひとりでに鳴るピアノの怪「神山高…

『屍人荘の殺人』今村昌弘(創元推理文庫)★★★★☆

『Murders at the House of Death』2017年。 各種ベスト10で四冠を達成したという、驚異のデビュー作です。第27回鮎川哲也賞受賞。 まずは映画研究部の合宿に届けられた脅迫状という、古式ゆかしい舞台が用意されていました。語り手・葉村の先輩である明智…

『よろず屋お市 深川事件帖』誉田龍一(ハヤカワ時代ミステリ文庫)★★★☆☆

2019年9月に新創刊されたハヤカワ時代ミステリ文庫の第一弾。 ミステリマガジン2019年11月号の著者インタビューで、『女には向かない職業』を偏愛する著者が「江戸のコーデリア・グレイ」に挑んだというので読んでみました。 両親を殺された8歳の少女が飼い…

『時空旅行者の砂時計』方丈貴恵(東京創元社)★★★☆☆

第29回鮎川哲也賞受賞作。 カバー装画とタイトルだけ見ると、おタンビーでロマンチックなファンタジーのようですが、惹句には「タイムトラベル×本格ミステリ」とあるうえに、略歴によれば京大ミステリ研出身ということで、意外と本格派でした。 自分が死ぬの…

『紫蘭の花咲く頃』佐々木俊介(佐々木ミステリ部,2017)★★★★☆

鮎川賞候補『繭の夏』でデビューした佐々木俊介氏が著者ホームページで公開している作品です。『繭の夏』『模像殺人事件』『仮面幻戯』『魔術師』に続く第五作目に当たります。『魔術師・模像殺人事件』は先ごろ文庫化されたばかりです。 あまりにも人工物め…

『虹のような黒』連城三紀彦(幻戯書房)★★★★☆

2002年から2003年に雑誌連載されたまま単行本化されていなかった長篇作品が、連載時の著者の挿絵入りで刊行されたものです。帯に“最後の未刊長篇”とあるように、これですべての長篇は単行本化されたことになります。 商業誌に連載されていた以上は未定稿とい…

『クドリャフカの順番』米澤穂信(角川文庫)★★★☆☆

『Welcome to KANYA FESTA!』2005年。 ついに部誌の文集『氷菓』が完成し、初期三部作も文化祭とともに幕を閉じました。 古典部員は「カンヤ祭」の名称を使わないことにしているはずですが、英題が「KANYA FESTA」となっているところからすると、『氷菓』販…

『愚者のエンドロール』米澤穂信(角川文庫)★★★★☆

『Why didn't she ask EBA?』2002年。 古典部シリーズ第二作。 二年F組が文化祭の演し物で作ることになったミステリー映画は、脚本家の本郷真由が急病になってしまい結末が不明のまま。そこで白羽の矢を立てられたのが、映画プロジェクトの代表者・入須冬美…

『氷菓』米澤穂信(角川文庫)★★★★☆

『氷菓』米澤穂信(角川文庫) 『You can't escape』2001年。 古典部シリーズをまとめて読もうと思ったものの、設定を忘れていたので第一作を読み直しました。 現在は英題が『The niece of time』に変更されているそうです。「時の娘」ならぬ「時の姪」、真…

『月が昇るとき』グラディス・ミッチェル/好野理恵訳(晶文社ミステリ)★★☆☆☆

『月が昇るとき』グラディス・ミッチェル/好野理恵訳(晶文社ミステリ) 『The Rising of the Moon』Gladys Mitchell,1945年。 サイモンとキースの兄弟が町に来たサーカスを楽しみにしていたとき、サーカスの女芸人がメッタ刺しにして殺されるという事件が…

『夏、19歳の肖像 新装版』島田荘司(文春文庫)★★☆☆☆

『夏、19歳の肖像 新装版』島田荘司(文春文庫) 昭和! 青春の甘酸っぱさよりも、昭和のおっさん臭さを感じてしまいました。実際、三十代の男が十五年前を回想しているという設定なので、おっさん臭いのも仕方ありません。 入院中に窓の外の家を覗き見ると…

『世界ショートショート傑作選1』各務三郎編(講談社文庫)★★★★☆

『世界ショートショート傑作選1』各務三郎編(講談社文庫) 1978年初刊。 「クライム&ミステリー」「走れ、ウィリー」ヘンリー・スレッサー/矢野浩三郎訳(Run, Willie Run,Henry Slesar,1959)★★★★★ ――ウィリーは監房の寝床に腰かけて、足を前後に動か…


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