「リズロ氏の奇妙な思い出」(Etrange souvenir de M. Liserot)★★★☆☆ ――その絵を見たリズロ氏は、描かれている風景に見覚えがあるように感じた。その場所を探し当て、車で向かったところ……(自動車事故で敢えなく死亡)。 「歌姫」(La cantarice)★★★☆☆ ――…
シリーズ第1弾は、個別の具体論より全体論や抽象論が多くて(特に綾辻発言が)、せっかくのDJ形式があんまり活かされていなかったような記憶があるのですが、第2弾である本書は、DJ二人の自作品から幕を開けることもあって、ようやくDJ形式のよさが…
「火宅」ヴィンセント・オサリヴァン/今本渉訳(The Burned House,Vincent O'Sullivan,1926)★★★☆☆ ――数年前のこと、北部アイルランドに滞在しなければならぬ羽目に陥りました。宿屋を出て少し散歩でもするつもりでした。彼方に家が一軒、目に入ったので…
いろいろ掲載されてはいるものの、まずは特集「贋作集」を読みました。 「ユラリウム」城昌幸(贋作エドガア・アラン・ポオ)★★★☆☆ ――その空は薄墨の色に澱み錆び付いてゐた。千年の静けさを保つかに見えた。生き行くことを止どめ、又、死を忘れた相である。…
創元のアンソロジーのシリーズ。今回は「ロマンティック」「時間SF」というかなり縛りのきつい作品集。こういうのはちょこっとあるからいいと思うんだけど……。ドがつくほどのロマンチストでないと、まとめて読むのはつらい。 「チャリティのことづて」ウィ…
800字程度の怪談を集めたアンソロジー。bk1の投稿怪談の文豪版。 しばらくは読んだことのある作品やあまり好みではない作品が続く。なかではやはり入澤康夫「ユウレイノウタ」、宮沢賢治「鬼言(幻聴)最終形/鬼言(幻聴)先駆形」、井坂洋子「くの字」…
前の作家からお題を拝借するリレー短編集。 たぶん北村薫は、わざと非ミステリを書いたんだろうなあ、とは思うものの、冒頭の北村・法月を読んだ時点では、これは終わった、と思ってしまいました。こんなゆるいお題で続いていくのか……と。(あとがきを読むと…
俳句がテーマのミステリ・アンソロジー。俳句がダイイング・メッセージ、俳人が探偵、俳句をお題に創作、句会が舞台、俳人が被害者、俳句が事件を象徴、等々さまざまなミステリが楽しめます。 編者自身「絶対に買いである」と述べているように、ページ下に編…
前半四篇がイギリス篇、後半四篇がアメリカ篇。「老いた子守り女の話」エリザベス・ギャスケル(The Old Nurse's Story,Elizabeth Gaskell,1852)★★★☆☆ ――ミス・ファーニヴァルがお住まいの領主館で過ごされるのが、ロザモンドお嬢さまにとって適している…
「犬」フリードリヒ・デュレンマット/岩淵達治訳(Der Hund,Friedrich Dürrenmatt,1952)★★★★★ ――その町で早速目についたのは、聖書の文句を朗々と唱えているぼろ服をまとった男とそれを取り囲む人垣だった。足もとにいる巨大で恐ろしい犬に気づいたのは…
大傑作もなかったけれど凡作もない。こういうのも珍しい。「マーサの夕食」ローズマリー・ティンパリー(Supper with Martha,Rosemary Timperley)★★★★☆ ――金曜日の夜、いつものように愛人のエステルを訪れた。マーサは理想的な妻だった。野暮な勘ぐりはさ…
読む前は勘違いしていたけれど、「児童文学」ではなく「少女少年小説」なのですね。「大洋」バリー・ユアグロー/柴田元幸訳(Ocean,Barry Yourgrau,2009)★★★★★ ――私の弟が大洋を発見する。夕食の席で、弟はそのことを報告する。「素敵じゃないの」と母は…
「豚の島の女王」ジェラルド・カーシュ/西崎憲訳(The Queen of the Pig Island,Gerald Kersh,1953) 北村薫のアンソロジー、カーシュの短篇集で読んだので今回はパスしましたが、傑作です。カーシュ(再?)評価のきっかけになった作品ですね。 「看板描…
「序文」ダシール・ハメット/矢野浩三郎訳(Dashiell Hammett,1931) ――私の好きな作品の一つに、こういうものがある。女が家に一人座っている/自分がこの世に一人きりであるのを知っている/他の生物は死に絶えたのだ/ドアのベルが鳴る。 もちろん本書…
角川文庫の背表紙デザインがまた変わった。誰も望んでないのにね。昔のみたいにヘボくなって懐かしい。 アンソロジーなのに各篇扉に著者名がなくタイトルだけというデザインが斬新。映画原作ものだから、原作者ではなく映画化名をアピールしたのかと思ったの…
さすがにこれはあまりにも時機を逸した遅すぎる復刊……ですが、ことさらに傑作揃いなのを期待せず普通のアンソロジーだと思って読めばやはり粒ぞろいです。「ジャングル探偵ターザン」E・R・バロウズ/斉藤伯好訳(Tarzan,Jungle Detective,E. R. Burroug…
同じポプラ社の『諸国物語』の国内版。海外版と比べると、ちょっと微妙なラインナップである。名訳シリーズとは違って、ネット上で読めるものもたくさんあるしなあ。というわけで、所有しているものは手持ちのものを、ネットで読めるものはネットで読んでみ…
贅沢にもほどがある。そんな一冊です。 一冊目のアンソロジーは〈美食〉。のっけから「吸血鬼ものは採らない」というこだわりを見せたり、スレッサーの未訳作品を詳しく紹介してくれてたり。 ボーナス・トラックはダナ・ライアン「不可能犯罪」。たちの悪い…
何よりミステリ・ジョッキーという発想が面白い。もっとこういうアンソロジーってあってもいいなあ。 それに、収録作にはずれがあっても、対談を楽しめるからお得感はあります。 「技師の親指」の有栖川氏コメントはいろんなところで読んでいるから新味はな…
『The Sixth Pan Book of Horror Stories』Ed.Herbert Van Thal,1965年。 ホラー・アンソロジー『パン・ブック』第六弾がまるごと翻訳されました。マイナー作家勢揃いなので、当たりがあると嬉しい(凡作も多いけど)。「終わらない悪夢」ロマン・ガリ(Th…
イギリス編『鼻のある男』に続いての、女流怪談アメリカ編。けっこうイギリス編の方がインパクトのある話が多くてイメージが覆されました。本書アメリカ編の方がじわじわ系の地味な作品が多かった。「黄色い壁紙」のシャーロット・ギルマン「揺り椅子」や、…
アリ・スミス「五月」(Ali Smith,May,2003)は木に恋するひとの話。木に恋するのはともかくとして、地面が白いもので埋め尽くされていた→花びらだった→花びらのやって来た先を見上げた→木があった→いつの間にか他人の家の庭に入り込んでいた……という冒頭…
文字がでかいので、見た目ほどには収録作は多くない。全21篇。しかしさすがに傑作が多い。「かけ」アントン・チェーホフ/原卓也訳(Пари,Антон Чехов,1889)★★★★★ ――十五年、「囚われの身」になるという実験。その時、彼の心に何が起きたか? 十五年の幽…
英国怪談ということで、クラシックな味わいの作品三篇を収録。「シートンのおばさん」ウォルター・デ・ラ・メア(Seaton's Aunt,Walter de la Mare,1927)★★★★☆ ――シートンのおばさんの噂は、本人と会うずっと前から聞かされていた。我々純血種の英国人は…
姉妹編『ここにあり』がいまいちだったのであんまり期待していなかったのだけれど、こちらは好みに合う作品が多かった。もともと好きな作家はともかく、名前すら知らなかった著者の作品が当たりだったのは、アンソロジーを読んでいてとても得した気分になれ…
「淋しいおさかな」別役実 ★★★☆☆ ――女の子はいつもひとりぼっちでした。星の光る夜は、遠い海のことを考えていました。夢の中におさかなが現われて、シクシクと泣くのです。「何故泣くの?」「淋しいからさ」 「淋しい」ってどういうことなの?ということを…
詳しい事情はよくわからないが、『小説新潮』の特集をもとにしたと書かれてあるので、基本的に『小説新潮』掲載作から選ばれているのでしょう。恐らくそれもあってか、これまでの北村アンソロジーと比べると打率は低い。※『さらにあり』の方は傑作揃いだった…
「日本海軍の秘密」中田耕治 ★★☆☆☆ ――イギリス人、シャーロック・ホームズは横浜駅で東海道線の列車から降りた。サラエヴォでの一発の銃声が全世界を戦争にまきこんだ、そんな時期、ホームズは日本にきていた。 ドイルの文体模写でもなければ、オリジナルの…
北村薫・有栖川有栖・法月綸太郎に続く、本格ミステリ・アンソロジー第四弾。「道化の町」ジェイムズ・パウエル/宮脇孝雄訳(A Dirge for Clowntown,James Powell,1989)★★★★☆ ――死んだ道化師はあお向けに倒れていた。カスタード・パイが顔を覆っている。…
絶対に読みたい!という作家がいるわけでもないのに、なぜ購入しようと思ったのかが記憶にない。ミステリ・サイドからは西尾維新しか参加していないというのも異色というか、京極夏彦の幅広い活躍ぶりを象徴しているとも言える(のかそれとも企画のピントが…