『第六ポンプ』パオロ・バチガルピ/中原尚哉・金子浩訳(早川書房 新ハヤカワSFシリーズ5002)

『Pump Six and Other Stories』Paolo Bacigalupi,2008年。 『ねじまき少女』のパオロ・バチガルピ第一短篇集の全訳。 『S-Fマガジン』で既読の作品をのぞく五篇を読む。 「ポケットのなかの法《ダルマ》」(Pocketful of Dharma,1999)★★★★☆ ――浮浪少年…

『アイアン・ハウス』ジョン・ハート/東野さやか訳(ハヤカワ・ポケミス1855)★★★☆☆

『Iron House』John Hart,2011年。 『ラスト・チャイルド』のジョン・ハートの最新作は、組織を抜けて追われる殺し屋の話です。 ――が、そこはジョン・ハート。愛情だの、それゆえの苦しみだのがメインを占め、殺しの世界の様子がピンと伝わって来ません。組…

『特捜部Q キジ殺し』ユッシ・エーズラ・オールスン/吉田薫・福原美穂子訳(ハヤカワ・ポケミス1853)★★★☆☆

『Fasandræberne』Jussi Adler-Orsen,2008年。 シリーズ第二作は、楽しみから人に暴力をふるい殺人を犯すエリート集団の犯罪に挑みます。すでに犯人が自首・服役している事件の資料が、どうして未解決事件の捜査を担当する特捜部に持ち込まれたのか――。 ど…

『リヴァイアサン クジラと蒸気機関』スコット・ウエスターフェルド/小林美幸訳(新ハヤカワSFシリーズ5001)★★★☆☆

『Leviathan』Scott Westerfeld,2009年。 オーストリア皇太子夫妻が「毒殺」された世界――遺伝子操作によって機械ではなく生物を発達させたイギリス等と、蒸気機関を発達させたドイツ諸国。 命を狙われ逃亡する皇太子夫妻の息子アレクサンダー(アレック)と…

『特捜部Q 檻の中の女』ユッシ・エーズラ・オールスン/吉田奈保子訳(早川ポケミス1848)★★★★☆

『Kvinden I Buret』Jussi Adler-Olsen,2008年。 デンマークの作品。 被害者や犯人の視点と捜査側の視点が交互に描かれたり、過去と現在が交差するタイプの作品は多々ありますが、被害者側に五年の年月が流れているというのは驚きました。 政治家のパフォー…

『疑われざる者』シャーロット・アームストロング/沢村灌訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆☆

『The Unsuspected』Charlotte Armstrong,1946年。 ロザリーンが首をくくって死んだ。婚約者のフランシスと、フランシスの叔母ジェーンは、遺書が捏造されたものだと見抜き、ロザリーンが秘書として働いていた元演出家グランディスンを疑うが、証拠がない――…

『51番目の密室 〈世界短篇傑作集〉』早川書房編集部編(ポケミス1835)★★★☆☆

『37の短篇』からのポケミス化第二弾。既読のものは今回はいくつかパスしました。今回パスした「魔の森の家」と「ジェミニイ・クリケット事件」(ただしわたしはイギリス版の方が好み)が双璧でしょうか。 「うぶな心が張り裂ける」クレイグ・ライス/小笠原…

『虹の果てには』ロバート・ロスナー/山本俊子訳(ポケミス1302)★★★★☆

『The End of Someone Else's Rainbow』Robert Rossner,1974年。 追われる犯罪者と、それを執拗に追いかける刑事――。 そんなサスペンスの常道ながら、この作品がひと味ちがうのは、犯罪者がすでに二十年の刑期を務めあげているところです。刑期を務めたのに…

『ラスト・チャイルド』ジョン・ハート/東野さやか訳(早川書房ポケミス1836)★★★★☆

『The Last Child』John Hart,2009年。 早川書房創立65周年&ハヤカワ文庫40周年記念作品と銘打って、ポケミス版と文庫版の同時発売。値段は一緒。ポケミス版は記念の金色。 誘拐されたまま一年経っても行方不明のままの妹をさがすため、ジョニーは太古の神…

『逃亡者』ロジャー・フラー/一ノ瀬直二訳(ポケミス0948)★★★★☆

『Fear In A Desert Town』Roger Fuller,1964年。 原作ではなく、ノヴェライゼーションでした。 一つの完結した作品ではなく、テレビシリーズ『逃亡者』の一エピソードという形の作品です。逃亡先の田舎町で巻き込まれた、とある事件。詳しいことはわかりま…

『狼は天使の匂い』デイヴィッド・グーディス/真崎義博訳(ポケミス1735)★★★★☆

『Black Friday』David Goodis,1954年。 古き良きダークなノワール小説。喧嘩には強い、女に惹かれる翳がある、ボスに気に入られる骨もある、でも「プロ」の殺しはできない半人前。むかしの舘ひろしとかが出てきそうな血のしょっぱさ。 かっこよくいえば娑…

『新・幻想と怪奇』仁賀克雄編訳(早川書房ポケミス1824) ★★★☆☆

大傑作もなかったけれど凡作もない。こういうのも珍しい。「マーサの夕食」ローズマリー・ティンパリー(Supper with Martha,Rosemary Timperley)★★★★☆ ――金曜日の夜、いつものように愛人のエステルを訪れた。マーサは理想的な妻だった。野暮な勘ぐりはさ…

『二壜の調味料』ロード・ダンセイニ/小林晋訳(ポケミス1822)★★★☆☆

『The Little Tales of Smethers and Other Stories』Lord Dunsany,1952年。短篇集なのでちまちま読んでちまちま感想をメモした。読み返してみたら走り書き過ぎて自分でもよくわからんくなってる。「二壜の調味料」(The Two Bottles of Relish)★★★☆☆ ――そ…

『帽子から飛び出した死』クレイトン・ロースン/中村能三訳(ポケミス287)★★★☆☆

『Death from a Top Hat』Clayton Rawson,1938年。 クレイトン・ロースンの第一作。 広告代理店で働くロス・ハートがアパートの部屋で仕事をしていると、「この部屋には死人がいる!」という声が聞こえた。あわてて廊下に出ると、サバット博士の部屋の前で…

『天外消失 世界短篇傑作集』早川書房編集部編(ポケミス1819)★★★☆☆

さすがにこれはあまりにも時機を逸した遅すぎる復刊……ですが、ことさらに傑作揃いなのを期待せず普通のアンソロジーだと思って読めばやはり粒ぞろいです。「ジャングル探偵ターザン」E・R・バロウズ/斉藤伯好訳(Tarzan,Jungle Detective,E. R. Burroug…

『ハリウッド警察25時』ジョゼフ・ウォンボー/小林宏明訳(早川書房ポケミス1803)★★★☆☆

『Hollywood Station』Joseph Wambaugh,2006年。長い長い会話だけから成る冒頭。話しているのは愚にもつかない無駄話――と思ったらあながち無関係なわけでもなかったのだね――と思った瞬間またも場面は変わって無駄話。 こんな感じで、気取らない警官の日常を…

『ダルジールの死』レジナルド・ヒル/松下祥子訳(ポケミス1810)★★★★☆

『The Death of Dalziel』Reginald Hill,2007年。 警察小説はやっぱり面白い。娯楽ミステリの中では一番面白いんじゃないだろうか。何しろ謎解きでもあればキャラクター小説でもあるしサスペンスや冒険、イアン・ランキンみたいにハードボイルドだったりも…

『上海から来た女』シャーウッド・キング/尾之上浩司訳(早川書房ポケミス1799)★★★★☆

『If I Die Before I Wake』Sherwood King,1938年。 なんでポケミス映画座ではないのだろうと思ったら、訳者の持ち込み企画なのか。 映画は未見ですが、ミステリではすっかりお馴染みになった偽装殺人(偽装自殺)ネタなので、途中までの話の展開は何となく…

『苦いオードブル』レックス・スタウト/矢沢聖子訳(ポケミス1797)★★★☆☆

『Bad for Business』Rex Stout,1940年。 スタウト作品の魅力と言えば、アーチーとウルフのキャラクター。それに尽きます。 ところがなぜか、『手袋の中の手』『苦いオードブル』と、二作続けてポケミスからは非ウルフものが刊行されました。 感想はという…

『ヴェルサイユの影』クリステル・モーラン/野口雄司訳(ポケミス1796)★☆☆☆☆

『L'ombre du soleil』Christelle Maulin,2005年。 『悪魔のヴァイオリン』に引き続いての〈パリ警視庁賞〉受賞作だが、ダメだろ、これは……。出来から言えば、やる気のない2時間サスペンス・レベル。 まず文章が下手っぴい。文法の教科書のような台詞をし…

『異人館』レジナルド・ヒル/松下祥子訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ1795)★★★★☆

『The Stranger House』Reginald Hill,2005年。 面白い。が、それは帯にあるように「あらゆる要素を詰め込んだ」というほどではなく、強いて言えば警察官ではない人間が主人公の警察小説、あるいはハリウッド映画的な謎解きサスペンスもの、という方がしっ…

『美しき罠』ビル・S・バリンジャー/尾之上浩司訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ1791)★★★★☆

バリンジャーに何を期待しているか、といったら、トリッキーなミステリなどではなく、こういう話を期待しているのである。 ファム・ファタル。女にからめとられ破滅してゆく刑事の思いは、惚れるとか焦がれるとかいう生やさしいものではなくて、『歯と爪』の…

『紳士同盟』ジョン・ボーランド/松下祥子訳(ポケミス1788)★★☆☆☆

シブイ映画のシブイ原作を出す〈ポケミス名画座〉。ちょっと好きなシリーズなのだが、さすがにこの作品は古くさすぎかな。古き良き、ってほどおっとりもしてないんだよね。 ふだん本を読むときにはそれほど視点を気にしたりはしない方なんだけど、こりはさす…

『赤髯王の呪い』ポール・アルテ/平岡敦訳(ポケミス1790)★★★☆☆

「赤髭王の呪い」(La Malediction de Barberousse,1995)★★★☆☆ ――1948年ロンドン。エチエンヌは故郷アルザス在住の兄から届いた手紙に驚愕する。ある晩、兄が密室状態の物置小屋の中を窓から覗いてみると、16年前“赤髯王ごっこ”をしたために呪いで刺殺され…

『花崗岩の街』スチュアート・マクブライド/北野寿美枝訳(ポケミス1784)★★★★★

凶悪犯に腹をめった刺しにされて一年間休職したローガン・マクレイ部長刑事が復帰早々に遭遇したのは、寒風吹き荒ぶ水路に浮かぶ、幼児の無惨な死体だった。あまりにむごい光景にローガンの傷ついた内臓はよじれそうだった。これをきっかけにしたように、街…

『5枚のカード』レイ・ゴールデン/横山啓明訳(ポケミス1777)★★★★☆

ポケミス名画座の一冊。ウェスタンなんて、映画はともかく小説は初めて読んだ。『明日に向って撃て!』とか『夕陽のガンマン』は好きなんだけれど、これはニューシネマとマカロニ・ウェスタンだし、ジョン・ウェインとかは大っ嫌いだからどうなのだろうと不…

『白薔薇と鎖』ポール・ドハティ/和爾桃子訳(ポケミス1785)★★★★☆

わしゃ驚いたね。なにしろ場所はロンドン塔、やたらに人が入り込める場所じゃあない。そのうえ、あの医者めは堅牢なそこの一室に閉じ込められ、見張りの兵隊までついておったんじゃから。ところが、夜が明けてみると、ころりと死んでおる。しかも毒殺ときた…

『手袋の中の手』レックス・スタウト/矢沢聖子訳(ポケミス1786)★★★☆☆

シオドリンダ・ボナーは私立探偵。親しい人からはドルと呼ばれている。共同経営者のシルヴィア・ラフレーが事務所にやって来たとき、婚約者のマーティン・フォルツが事件相談の最中だった。地所のキジが絞め殺されるという事件が何度も起こったのだ。マーテ…

『あなたに不利な証拠として』ローリー・リン・ドラモンド/駒月雅子訳(ポケミス1783)★★★★☆

重たくてしんどい話なのかと思っていたけど、読んでみたらけっこうリーダビリティが高かった。最後が癒しとか啓発系の話になってしまったのが残念。原題『Anything You Say Can and Will Be Used Against You』。『キャサリン』(Katherine)★★★★★ 「完全」…

『難破船』スティーヴンスン&オズボーン/駒月雅子訳(ポケミス1771)★★★★☆

イギリスの軍艦が、南洋ミッドウェイ沖で座礁したフライング・スカッド号の生存者たちを救助して、サンフランシスコに入港した。パリで知り合った芸術家肌のラウドン・ドッドと実業家ジム・ピンカートンは、財宝を積んでいると噂されるこの難破船の権利を、…


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