『ディナーで殺人を(上)』ピーター・ヘイニング編(創元推理文庫)★★★☆☆

「はしがき」ピーター・ヘイニング/高田惠子訳「第一部 当店のお薦め――有名作家たちの作品」「特別料理」スタンリイ・エリン/田口俊樹訳(The Speciality of the House,Stanley Ellin)★★★★☆ ――ラフラーはコステインをスビロの店に招待した。コステインは…

『あなたならどうしますか?』シャーロット・アームストロング/白石朗他訳(創元推理文庫)★★★☆☆

『The Albatross』Charlotte Armstrong,1957年。 「あほうどり」白石朗訳(The Albatross,1957)★★★☆☆ ――部屋を間違えた酔っぱらいを、暴漢と間違え殴りつけたトムとエスター・ガードナー夫妻は、翌週の新聞でその男コートニー・コールドウェルが死んだこ…

『星を撃ち落とす』友桐夏(創元推理文庫)★★★☆☆

『The Shooting Star』2012年。 著者による一般デビュー作の文庫化です。 一応のところは三つの短篇が収められていますが、短篇同士は互いにつながっており、次の作品のなかで明かされたことによって、前の作品で描かれていたことの意味が変わってきてしまい…

『まるで天使のような』マーガレット・ミラー/黒原敏行訳(創元推理文庫)★★★☆☆

『How Like An Angel』Margaret Millar,1962年。 マーガレット・ミラーの代表作、新訳です。 ギャンブルで一文なしになった私立探偵ジョー・クインがヒッチハイクの末に降ろされたのは、新興宗教団体の暮らす〈塔〉と呼ばれる場所でした。一夜の宿を借りた…

『王とサーカス』米澤穂信(東京創元社)★★★★☆

著者の出世作『さよなら妖精』の直接の続編というわけではなく、登場人物の一人である大刀洗万智が大人になってから経験した出来事が綴られています。『街角で謎が待っている がまくら市事件』に収録されていた「ナイフを失われた思い出に」はただの番外編で…

『ユダの窓』カーター・ディクスン/高沢治訳(創元推理文庫)★★★★☆

『The Judas Window』Carter Dickson,1938年。 新訳版――というか、創元から出るのは初めてなんですね。 作品そのものもさることながら、なんと巻末に瀬戸川猛資の座談会を初活字化! 瀬戸川猛資×鏡明×北村薫×斎藤嘉久(×戸川安宣)という豪華な顔ぶれが、カ…

『ルピナス探偵団の当惑』津原泰水(創元推理文庫)★★★☆☆

1994年と1995年に講談社X文庫から刊行されていた二篇を全面改稿+書き下ろしを加えたもの、だそうです。だから「二十世紀の黄昏の、」なんですね。 「第一話 冷えたピザはいかが」★★★☆☆ ――犯人は意外ではなかった。その夜、編集者の勤野《ゆめの》麻衣子は…

『ヘビイチゴ・サナトリウム』ほしおさなえ(創元推理文庫)★★★★☆

第12回鮎川賞最終候補作。 ひらがな名前の女性作家に、少女趣味全開のタイトル――これはふわふわな小説に違いないと先入観を持っていました。いけませんね。 古典的、といっていいほどの少女小説にして学園小説にして青春小説でした。少女たちだけの完結した…

『ボールパークの神様』本城雅人(創元推理文庫)★★★☆☆

『God in The Ballpark』2012年。 メジャー球団のクラブボーイになった留学生を主人公とした短篇集に、文庫書き下ろし一篇を加えたものです。『ミステリーズ!』に連載していた『誉れ高き勇敢なブルーよ』の最初の何章かを読んで、骨太なスポーツ小説に惹か…

『Jの少女たち』太田忠司(創元推理文庫)

[創元推理M]『Jの少女たち』太田忠司(創元推理文庫)★★★★☆ 阿南シリーズ第二作。 プロローグに当たる一人の少女の死――。 それに続くのは、阿南が警察をやめて工場で働いているという衝撃的な場面です。そこに現れた私立探偵・藤森涼子から、前作の事件で知…

『夜の国のクーパー』伊坂幸太郎(創元推理文庫)★★★★★

ヤラレタ。読み終えてから思い返してみれば、トムと出会ったときの〈私〉の状況からして、かの風刺小説へのオマージュでもあったのですね。 戦争に負けた僕たちの町に、顔を泥のようなもので塗った鉄国《てつこく》兵士たちが馬という動物に乗って現れ、銃と…

『太宰治の辞書』北村薫(新潮社/創元推理文庫)★★★☆☆

待望の――というより、もはや期待もしていなかった円紫師匠と〈私〉シリーズの最新作です。――が、何と言っていいのやら。 カバー装画は高野文子……なのですが、現在の高野文子の作風の絵なんですよね。当たり前ですが。 作中の時間も現実と同じように流れてい…

『リレーミステリ 吹雪の山荘』笠井潔ほか(創元推理文庫)★★★★☆

巻頭言が頼もしい。単なるお祭りではなく、一冊の優れたミステリを作りあげようという真摯な思いが伝わってきます。そのためのルールの一つとして、文体の不統一による不自然さを避けるために、名探偵キャラクターを持っている作家を起用し、すでに確立され…

『歌うダイアモンド』ヘレン・マクロイ/好野理恵他訳(創元推理文庫)★★★☆☆

『The Singing Diamonds and Other Stories』Helen McCloy,1965年。 「まえがき」ブレッド・ハリデイ「東洋趣味《シノワズリ》」今本渉訳(Chinoiserie,1946) 米澤穂信編『世界堂書店』で今本訳を、『EQミステリマガジン』1956年12月号No.006で田中西二…

『朝霧』北村薫(創元推理文庫)★★★★☆

「山眠る」★★★★☆ ――駅のホームで小中学生のころの同級生と一緒になった。鷹城君という本屋の子だ。鷹城君はちょっと複雑な顔をしたあと、「本屋やってて、やなこともあるぜ」と言った。「本郷の親父さん、校長先生をしていたろう。ずっと一人で、堅物という…

『怪盗ニック全仕事1』エドワード・D・ホック/木村二郎訳(創元推理文庫)★★★☆☆

怪盗ニックのシリーズはこれまでハヤカワ文庫のオリジナル編集で出されていましたが、ハヤカワ版に未収録の作品も含めて全作品を年代順に網羅しようという試みの、第一集です。邦題が「〜を盗め」に統一されました。 「斑の虎を盗め」(The Theft of the Clo…

『いま見てはいけない デュ・モーリア傑作集』ダフネ・デュ・モーリア/務台夏子訳(創元推理文庫)★★★★☆

『Don't Look Now and Other Stories』Daphne du Maurier,1971年。 解説にも紹介文にもいっさい説明がありませんが、むかし三笠書房から出ていた『真夜中すぎでなく』の新訳版という位置づけになるようです。 「いま見てはいけない」(Don't Look Now,1966…

『夜の床屋』沢村浩輔(創元推理文庫)★★★☆☆

単行本『インディアン・サマー騒動記』改題文庫化。 「夜の床屋」★★★☆☆ ――僕と高瀬は草深い山道を歩いていた。道に迷ったままたどり着いたのは、無人駅だった。それでも野宿に比べれば天国だ。十一時過ぎ。トイレに行った高瀬が信じられないものを見た。廃屋…

『街角で謎が待っている がまくら市事件』秋月涼介他(創元推理文庫)★★★☆☆

『晴れた日は謎を追って』に続き、『蝦蟇倉市事件2』の文庫化です。 「さくら炎上」北山猛邦 ★★★☆☆ ――桜の下に陽子を見つけた。驚かせようとこっそり近づいたとき、駆け寄ってくる男に気づいた。私と陽子が通う蝦蟇倉大学付属高校の生徒だ。二人はどんな関…

『プリズム』貫井徳郎(創元推理文庫)★★★★☆

とりあえず「『慟哭』の作者が本格ミステリの極限に挑んだ」という惹句に惹かれて読みました。 各章のタイトルを見た時点で、何となく構図の見当はつくわけですが、いざ実際にその仕掛けを目の当たりにしてみると、脱帽するほかありません。通常ミステリとし…

『晴れた日は謎を追って がまくら市事件』伊坂幸太郎他(創元推理文庫)★★★☆☆

架空の町「蝦蟇倉市」を舞台にした競作集『蝦蟇倉市事件1』の文庫化。 「弓投げの崖を見てはいけない」道尾秀介 ★★★★☆ ――弓投げの崖には自殺者たちの霊が集まっている。自宅のゆかり荘に帰る途中の安見邦夫は、突然ハンドルを切った前方車両を避けきれなか…

『福家警部補の挨拶』大倉崇裕(創元推理文庫)★★★☆☆

和製『刑事コロンボ』シリーズの第一集。主人公の福家警部補は、学生やOLにしか見えない小柄で短髪の眼鏡をかけた女性です。刑事に見えないところは先輩方と同様なれど、コロンボや古畑と比べてまったくアクがなく、徹夜の連続にも耐えられるパワーの持ち…

『猫と鼠の殺人』ディクスン・カー/厚木淳訳(創元推理文庫)★★★★☆

『Death Turns the Table (Seat of the Scornful)』John Dickson Carr,1942年。 アイアトン判事は峻厳な人物だった。罪の重い者にはぬか喜びさせ、罪の軽い者には反省を促す機会を与えた。娘のコニーが連れてきた婚約者トニー・モレルは、ひいき目に見ても…

『魔法飛行』加納朋子(創元推理文庫)★★☆☆☆

駒子が瀬尾さんに送った「手紙」という名の小説と、返信と、「誰かから届いた手紙」から成る連作短篇集。『ななつのこ』に続く、駒子シリーズ二作目。『ななつのこ』には存在した、飛び抜けた傑作というものがない一方で、はじめから連作短篇にする意図があ…

『赤い右手』J・T・ロジャーズ/夏来健次訳(創元推理文庫)★☆☆☆☆

『The Red Right Hand』Joel Townsley Rogers,1945年。 正直これは評価のしようがないなあ。。。 あるいは折原一あたりなら同じ道具立てでちゃんとした本格ミステリに出来るかもしれませんが、フツーは無理――というか、ただの失敗作でしょう、これは。 発表…

『花野に眠る 秋葉図書館の四季』森谷明子(東京創元社)★★★☆☆

名作『れんげ野原のまんなかで』の続編登場です。 連作短篇集だった前作とは違い、こちらはほぼ連作長篇でした。それだけに、一話一話が日常の謎の傑作であり五話分五回も感動を体験できた前作と比べると、一話一話の謎はよりいっそう小粒という感は否めませ…

『奇談蒐集家』太田忠司(創元推理文庫)★★☆☆☆

本当の奇談を聞きたくて、新聞広告を出している老人・恵美酒《えびす》。そんな恵美酒に話を聞かせるために、今日もバー「strawberry hill」を誰かが訪れるのだった……。 基本的なパターンは、「客が奇談を語る」→「恵美酒が喜ぶ」→「恵美酒の助手・氷坂《ひ…

『悪意の糸』マーガレット・ミラー/宮脇裕子訳(創元推理文庫)★★★☆☆

『Do Evil In Return』Margaret Millar,1950年。 望まない妊娠をしてしまった若妻が、法律で禁止されている堕胎を頼みに主人公の医師のところにやって来るが断られ、その後消息を絶つ……。 発端だけならどうということのない挿話なのですが、主人公シャーロ…

『誰の死体?』ドロシー・L・セイヤーズ/浅羽莢子訳(創元推理文庫)★★★☆☆

『Whose Body?』Dorothy L. Sayers,1923年。 記念すべきピーター卿もの第一作。 すでにバンターは有能で、ピーター卿には引用癖があり、自他共に認めるディレッタント探偵にして、シェルショックという暗い影を負っている……というキャラクターは確立されて…

『テニスコートの殺人』ジョン・ディクスン・カー/三角和代訳(創元推理文庫)★★★★☆

『The Problem of the Wire Cage』John Dickson Carr,1939年。 殺された男の周りに残されていたのは、被害者であるフランクの足跡と、発見者である元婚約者ブレンダの足跡だけ。このままではブレンダが疑われる――そう思ったブレンダと恋人のヒューは、ブレ…


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