『幽霊紳士/異常物語 柴田錬三郎ミステリ集』柴田錬三郎(創元推理文庫)★★★★☆

『幽霊紳士/異常物語 柴田錬三郎ミステリ集』柴田錬三郎(創元推理文庫) 『A Ghost Gentleman/Bizarre Tales』1960年/1961年。 幽霊紳士を狂言回しにしたミステリ集『幽霊紳士』と、奇譚集『異常物語』の合本です。『花嫁首 眠狂四郎ミステリ傑作選』は…

『ミステリマガジン』2023年9月号No.760【追悼 原尞】

『ミステリマガジン』2023年9月号No.760【追悼 原尞】『それからの昨日』冒頭三章 三章までしか書かれていない遺稿です。とはいえプロットはある程度出来ているようなので、いつか誰かが書き継いでくれるでしょう。 「追悼エッセイ」法月綸太郎・木村二郎他…

『時のきざはし 現代中華SF傑作選』立原透耶編(新紀元社)★★★☆☆

『時のきざはし 現代中華SF傑作選』立原透耶編(新紀元社) 『The Stairway of the Time: An Anthology of Chinese Contemporary Science Fiction』2020年。 日本オリジナル編集の中華SF傑作選。「太陽に別れを告げる日」江波《ジアン・ボー》/大久保洋…

『千霊一霊物語』アレクサンドル・デュマ/前山悠訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆

『千霊一霊物語』アレクサンドル・デュマ/前山悠訳(光文社古典新訳文庫) 『Les Mille et un fantômes』Alexandre Dumas,1849年。 角川文庫の怪奇小説アンソロジーに「蒼白の貴婦人」が単独で訳載されていたので、てっきり本書も怪奇小説短篇集だと思い込…

『短編ミステリの二百年2』チャンドラー、アリンガム他/小森収編/猪俣美江子他訳(創元推理文庫)★★★☆☆

『短編ミステリの二百年2』チャンドラー、アリンガム他/小森収編/猪俣美江子他訳(創元推理文庫)★★★☆☆「挑戦」バッド・シュールバーグ/門野集訳(The Dare,Budd Schulberg,1949)★★★☆☆ ――ポールは海を見つめていた。モーターボートと水上スキーの娘が…

『紙魚の手帖』vol.11

『紙魚の手帖』vol.11『いさなとり』(1)熊倉献 ――代々ハンターの家系のぼくは、将来、普通に暮らしたかった……。 『春と盆暗』『生花甘いかしょっぱいか』『ブランクスペース』の熊倉献による新連載。ハンターが獲物になってしまう普通じゃなさと、ポテトサ…

『S-Fマガジン』2023年8月号No.758【《マルドゥック》シリーズ20周年】

『S-Fマガジン』2023年8月号No.758【《マルドゥック》シリーズ20周年】「《マルドゥック》シリーズ20周年」 「カバーイラストギャラリー」 「『マルドゥック・アノニマス』精神の血の輝きを追い続けて」冲方丁 「20周年対談」冲方丁×寺田克也 「『マルド…

『幻の「長くつ下のピッピ」』高畑勲×宮崎駿×小田部羊一(岩波書店)★★★★☆

『幻の「長くつ下のピッピ」』高畑勲×宮崎駿×小田部羊一(岩波書店) 高畑勲は1968年の映画『太陽の王子 ホルスの大冒険』の制作が遅れ興行的にも失敗したことで、東映動画での将来が絶たれてしまいます。しかし1971年、東京ムービーの制作会社Aプロダクシ…

『美女と竹林のアンソロジー』森見登美彦リクエスト!(光文社文庫)★★☆☆☆

『美女と竹林のアンソロジー』森見登美彦リクエスト!(光文社文庫) 森見登美彦編纂の本書のテーマは美女と竹林。そのまんまです。森見登美彦にしか編纂できないアンソロジーではあります。 「来たりて取れ」阿川せんり(2018)★★★☆☆ ――北海道に竹林はない…

『ジュスタ』パウル・ゴマ/住谷春也訳(松籟社 東欧の想像力18)★★☆☆☆

『ジュスタ』パウル・ゴマ/住谷春也訳(松籟社 東欧の想像力18) 『Justa』Paul Goma,1995年。 ルーマニアの作家。 本書は二つの点で難解です。一つはリズミカルとも言えるような独特の文体と細かい説明を廃した文章であり、もう一つがルーマニアの歴史に…

『夏休みの拡大図』小島達矢(双葉文庫)★★☆☆☆

『夏休みの拡大図』小島達矢(双葉文庫) 印象的なタイトルは、登場人物の一人であるちとせの一言「夏休みって人生の縮図だと思うんだ」(p.185)と、それに対する語り手・百合香のアンサー「だって夏休みが終わったらさ、二学期が始まるじゃない」(p.279)…

『英語文章読本』阿部公彦(研究社)★★☆☆☆

『英語文章読本』阿部公彦(研究社) 文章読本とはあるものの、作文指南でも名文案内でもなく、英文の特徴をとっかかりにした作品鑑賞というべきものです。同じ著者による『英詩のわかり方』と同様、わかりやすく書こうとしているのか却ってまどろっこしく、…

『ミステリマガジン』2023年7月号No.759【アガサ・クリスティーの魔力】

『ミステリマガジン』2023年7月号No.759【アガサ・クリスティーの魔力】「見知らぬ人」アガサ・クリスティー/羽田詩津子訳(The Stranger,Agatha Christie,1932) ――婚約者のディックが何年かぶりに帰国するというのに、エニドの心は晴れなかった。不幸せ…

『トラベル・ミステリー聖地巡礼』佳多山大地(双葉文庫)★★☆☆☆

『トラベル・ミステリー聖地巡礼』佳多山大地(双葉文庫) 名作トラベル・ミステリーの現場を訪れ、現地に則して作品を紹介しつつ、作品の現代的意義などでまとめた紀行書評です。 好きな評論家であり、編者を務めた『線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和…

『皇帝と拳銃と』倉知淳(創元推理文庫)★☆☆☆☆

『皇帝と拳銃と』倉知淳(創元推理文庫) 『Emperor and Gun』2017年。「運命の銀輪」(2009)★☆☆☆☆ ――伊庭は凶器の金槌を振り降ろした。友人であり仕事のパートナーでもあった和喜多。四季杜忍がこんな形で解消とはな……。自転車の隠し場所を目指すと、ホー…

『くにさきの鬼』中川学絵(六郷満山日本遺産推進協議会)★★☆☆☆

『くにさきの鬼』中川学絵(六郷満山日本遺産推進協議会)★★☆☆☆ 大分県国東市の日本遺産「鬼が仏になった里『くにさき』」のストーリーPR絵本。 まず「地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリー」という日本遺産の定義の「ストー…

『放課後探偵団2 書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー』青崎有吾・斜線堂有紀ほか(創元推理文庫)★★☆☆☆

『放課後探偵団2 書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー』青崎有吾・斜線堂有紀ほか(創元推理文庫) 『Highschool Detectives II』2020年。 新鋭による学園ミステリ『放課後探偵団』、10年ぶりの第2弾です。ほとんどが未読の作家でした。第一集とは違い、…

『法月綸太郎の冒険』法月綸太郎(講談社文庫)★★★☆☆

『法月綸太郎の冒険』法月綸太郎(講談社文庫)「死刑囚パズル」(1992)★★★★☆ ――有明省二の死刑執行日だった。非番だった中里刑務官は怪我をした同僚に代わって松山所長に呼び出された。松山は死刑囚へのはなむけとして、自分のポケットから最後の一服を勧…

『博奕のアンソロジー』宮内悠介リクエスト!(光文社文庫)★★☆☆☆

『博奕のアンソロジー』宮内悠介リクエスト!(光文社文庫) 編者リクエストによる書き下ろしアンソロジー・シリーズ第2期の1冊。 「獅子の町の夜」梓崎優(2018)★★★☆☆ ――仕事で訪れたシンガポールで、僕はバカンス中の老夫妻に出会った。シンガポールで…

『ドミノ in 上海』恩田陸(角川書店)★★★★☆

『ドミノ in 上海』恩田陸(角川書店) 文字通りドミノ倒しのように幾多の登場人物がパタパタと運命に押し倒され、やがて結末に向かってゆく名作『ドミノ』の続編です。『ドミノ』の連載開始が2000年なのでほぼ20年ぶりの新作となりますが、20年後に突然刊行…

『線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編〉』佳多山大地編(双葉文庫)★★★☆☆

『線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編〉』佳多山大地編(双葉文庫) 同じ双葉文庫から『トラベル・ミステリー聖地巡礼』を出していることからも、鉄道ミステリ好きなことが窺える佳多山大地氏による、国内傑作選です。埋もれた名作ではなく、「大…

『S-Fマガジン』2023年6月号No.757【藤子・F・不二雄のSF短編】

『S-Fマガジン』2023年6月号No.757【藤子・F・不二雄のSF短編】 短編といっても短編小説ではなく短編漫画の特集でした。そりゃそうか。「ヒョンヒョロ」藤子・F・不二雄(1971) ――マーちゃんが円盤にのったうさぎちゃんから手紙をもらったとママに見…

『だいぶつさま おまつりですよ』苅田澄子文/中川学絵(アリス館)

『だいぶつさま おまつりですよ』苅田澄子文/中川学絵(アリス館) 『だいぶつさまのうんどうかい』に続く、〈だいぶつさま〉第2弾。 運動会に続いて今回はお祭りです。なるほど大人数が集まるのでもってこいです。 お釈迦様はわたあめ作り。阿弥陀如来は…

『半分世界』石川宗生(東京創元社)★★☆☆☆

『半分世界』石川宗生(東京創元社) 『Cloven World and Other Stories』2018年。 第7回創元SF短編賞受賞作を含む四篇収録。ワンアイデアを提示してその設定をひたすら詳細に書き連ねるだけで、アイデアからの発展は何一つありません。出オチをどこまで…

『敗残者』ファトス・コンゴリ/井浦伊知郎訳(松籟社 東欧の想像力17)★★★☆☆

『敗残者』ファトス・コンゴリ/井浦伊知郎訳(松籟社 東欧の想像力17) 『I humburi』Fatos Kongoli,1992年。 アルバニアの作家。 1991年、ヨーロッパ行きの難民船に乗り込むはずだった語り手のセサル・ルーミは、直前になって船に乗るのを取りやめます。…

『暗闇にレンズ』高山羽根子(東京創元社)★★★☆☆

『暗闇にレンズ』高山羽根子(東京創元社) 現代を舞台に監視カメラの死角で自撮りする女子学生二人が、やがて「エンバーミング」の映像を撮り始める「Side A」。 明治時代に始まり現代にまで連なる、カメラと映画に関わる嘉納一族の歴史をひもとく「Side B…

『ミステリマガジン』2023年5月号No.758【モリアーティ教授 ホームズ永遠の宿敵《ライバル》】

『ミステリマガジン』2023年5月号No.758【モリアーティ教授 ホームズ永遠の宿敵《ライバル》】「大佐でも伯爵でもない――「教授」だからこそ」日暮雅通「『憂国のモリアーティ』著者・三好輝氏メールインタビュー」「モリアーティ教授の不愉快な一日」黒谷知…

『雪旅籠』戸田義長(創元推理文庫)★★★☆☆

『雪旅籠』戸田義長(創元推理文庫) 『The Casebook of Detective Toda Sozaemon vol.2』2020年。 鮎川賞候補作『恋牡丹』の姉妹編。前作のその後の物語ではなく、前作各話の間を埋める八篇の作品集ということで、続編ではなく姉妹編ということのようです。…

『孤島の来訪者』方丈貴恵(東京創元社)★★★☆☆

『孤島の来訪者』方丈貴恵(東京創元社) 帯には「『時空旅行者の砂時計』に連なるシリーズ第2弾」とあるので、あれの続編とはどういうことなのかと不思議に思ったのですが、シリーズ第2弾とは続編という意味ではなく、前作の事件当事者だった竜泉家の親戚…

『さむけ』ロス・マクドナルド/小笠原豊樹訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆☆

『さむけ』ロス・マクドナルド/小笠原豊樹訳(ハヤカワ・ミステリ文庫) 『The Chill』Ross Macdonald,1964年。 裁判所に証人として出廷したアーチャーは、傍聴席にいたアレックスという青年から声をかけられる。結婚したばかりの妻ドリーが結婚初日に姿を…


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