『シャーロック・ホームズの帰還』アーサー・コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫) 『The Return of Sherlock Holmes』Arthur Conan Doyle,1905年。 「空家の冒険」(The Adventure of the Empty House,1903)★★☆☆☆ ――ロナルド・アデヤ卿殺害事件の調書を…
『されば愛しきコールガールよ 私立探偵パーデュー・シリーズ①』ロス・H・スペンサー/田中融二訳(ハヤカワ・ミステリ文庫) 『The DADA Caper』Ross H. Spencer,1978年。 何かのミステリ・ベスト本で紹介されていて、短い章のすべてにアンダーウッドじい…
『プラスマイナスゼロ』若竹七海(ポプラ文庫) 葉崎市シリーズ第5作。ピュアフル版は2008年ジャイブ版に書き下ろし「卒業旅行」を加えたもの。ポプラ文庫の新装版にはそれに加えてさらに書き下ろし掌篇「潮風にさよなら」が収録されています。 容姿端麗で…
『どこか、安心できる場所で 新しいイタリアの文学』パオロ・コニェッティ他/関口英子、橋本勝雄、アンドレア・ラオス編(国書刊行会) 日本オリジナルの21世紀イタリア文学アンソロジー。 小野正嗣による序文が収録されていますが、内容にがっつり踏み込…
『ふたたび赤い悪夢』法月綸太郎(講談社ノベルス) 著者あとがきによれば、『頼子のために』の続編であり、『頼子のために』『一の悲劇』『ふたたび赤い悪夢』で三部作を成し、さらには『雪密室』の後日談という話です。 なるほど登場人物とその過去の因縁…
『ゴジラ×コング 新たなる帝国』(Godzilla x Kong: The New Empire,米,2024)★★★☆☆ レベッカ・ホール、ダン・スティーヴンス他出演。 これはこれでよい。 アメコミヒーロー集結映画の怪獣版といったところでした。 どうやら続編らしく、前提となる設定が…
『石の繭 警視庁殺人分析班』麻見和史(講談社文庫) シリーズタイトルの「殺人分析班」とは、警視庁捜査一課第十一係のメンバー5人が捜査会議では出来ない推測や議論を、居酒屋で話し合う集まりにつけた名前です。 主人公は新人刑事の如月塔子。病死した警…
『幻想と怪奇』15【霊魂の不滅 心霊小説傑作選】「欧米心霊学略年譜」「モレル夫人の最後の降霊会」エドガー・ジェプスン/髙橋まり子訳(Mrs. Morrel's Last Seance,Edgar Jepson,1912)★★★☆☆ ――二年前の冬、わたしはモレル夫人の降霊会にすべて出席した…
『炎の眠り』ジョナサン・キャロル/浅羽莢子訳(創元推理文庫) 『Sleeping In Flame』Jonathan Carroll,1988年。 一応のところは『月の骨』から続くシリーズ2作目らしいのですが、ウェーバー・グレストンやカレン・ジェイムズと夢の国ロンデュアに言及さ…
『S-Fマガジン』2024年6月号No.763【特別対談 宇多田ヒカル×小川哲】「特別対談 宇多田ヒカル×小川哲」 視点の切り替え、実体験なのかよく聞かれる、などの共通点が。 「Netflix独占配信シリーズ『三体』公開記念特集」 「『三体』ドラマ比較レビュー」加…
『ハテラス船長の航海と冒険 ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクションⅠ』ジュール・ヴェルヌ/荒原邦博訳(インスクリプト) 『Voyages et aventures du capitaine Hatteras』Jules Verne,1866年。 すでに『気球に乗って五週間』『地底旅行』『地球から…
『猫島ハウスの騒動』若竹七海(光文社文庫) 初刊2006年。 猫ばかりの島、通称・猫島。高校生の虎鉄は海岸でナイフを突き立てられた猫の剥製を見つける。たまたま観光で島を訪れていた葉崎署の刑事・駒持は、猫アレルギーに苦しみながらも事件の背後に何か…
『アラバスターの壺/女王の瞳 ルゴーネス幻想短編集』ルゴーネス/大西亮訳(光文社古典新訳文庫) 『El vaso de alabastro/Los ojos de la reina』Leopoldo Lugones。 日本オリジナルの傑作選。河出文庫『ラテンアメリカ怪談集』にルゴネスの表記で「火の…
『紙魚の手帖』vol.16 2024 APRIL【駅×旅】「きみは湖」砂村かいり ――毎年同じ日に同じ場所で購入された切符。いなくなった恋人が集めていたそれを頼りに、わたしは「湖に浮かぶ駅」に降り立つ(惹句より)「そこに、私はいなかった。」朝倉宏景 ――高3の夏…
『秘密(下)』ケイト・モートン/青木純子訳(創元推理文庫) 『The Secret Keeper』Kate Morton,2012年。 ローレルは事件について弟のジェリーに相談するとともに、ヴィヴィアンについて調査を進めてゆきます。そうして明らかになるドリーの噓、ヴィヴィ…
『秘密(上)』ケイト・モートン/青木純子訳(創元推理文庫) 『The Secret Keeper』Kate Morton,2012年。 ケイト・モートンの第四作。 一九六一年、弟ジェリーの誕生日の日、ボーイフレンドとの約束の時間を待っていた十六歳のローレルは、見知らぬ男が訪…
『九月は謎×謎修学旅行で暗号解読 私立霧舎学園ミステリ白書』霧舎巧(講談社ノベルス) 霧舎学園シリーズ第六作。2005年9月刊行。 タイトルに暗号解読とあるように、メインとなる謎は暗号による宝探し/人捜しですが、ほかにもアリバイ、叙述トリック、二人…
『ミステリマガジン』2024年5月号No.764【シャーロック・ホームズを演じる】 毎度毎度のホームズ特集ですが、今回は変化球で来ました。「ノサカラボ 野坂実氏メール・インタヴュー」 朗読劇というニッチなホームズ。 「サー・ヘンリー・バスカヴィル殺人事件…
『平成怪奇小説傑作集2』東雅夫編(創元推理文庫) 後半は『幽』やてのひら怪談作家が占めます。ということは怪談実話ブームもこの頃だったでしょうか。 「匂いの収集」小川洋子(1998)★★★★☆ ――僕は彼女に髪をといてもらうのが好きだ。彼女が触れたとたん…
『いただきます。ごちそうさま。 怪談えほん13』あさのあつこ作/加藤休ミ絵/東雅夫編(岩崎書店)、『おめん 怪談絵本14』夢枕獏作/辻川奈美絵/東雅夫編(岩崎書店) 怪談えほん第三期の第二回配本と第三回配本です。第二期の高橋克彦はいつの間にか中止…
『私立霧舎学園ミステリ白書 八月は一夜限りの心霊探偵』霧舎巧(講談社ノベルス) 霧舎学園シリーズ第五作。 七月事件で知り合った久賀カメラマンに口説き落とされて漫画雑誌のグラビアを飾った琴葉だったが、撮影現場のサイパンには母親までくっついて来た…
『シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選』シェルドン・テイテルバウム&エマヌエル・ロテム編/中村融他訳(竹書房文庫) 『Zion's Fiction: A Treasury of Israeli Speculative Literature』Sheldon Teitelbaum and Emanuel Lottem ed.,2018年。 …
『私がふたりいる』戸川昌子(光文社文庫) 1977年『蒼い悪霊』の改題文庫化。 学園都市の建設に携わった職員が電車内で遭遇した、顔を白い繃帯でぐるぐる巻きにした若い女性。彼女はクローンの研究を心霊学と勘違いして、同じ人間がふたりいる証拠である手…
『さよならの手口』若竹七海(文春文庫) 文庫書き下ろしの葉村晶シリーズ第四作。 長谷川探偵事務所の閉鎖に伴い古本屋でアルバイトをしていた葉村は、故人の遺品の整理中、古くなっていた床板に開いた穴から落ちて怪我をしてしまう。あろうことか穴からは…
『私立霧舎学園ミステリ白書 七月は織姫と彦星の交換殺人』霧舎巧(講談社ノベルス) 霧舎学園シリーズ四作目。 期末テスト前日、琴葉は弓絵に連れ出され、ナオキが籠っているスタジオを訪れた。そこで芸能カメラマンの仁多森が隣のマンションから墜落死した…
『紙魚の手帖』vol.15 2024 FEBRUARY【創立70周年記念企画 エッセイ「わたしと東京創元社」】「創立70周年記念企画 エッセイ わたしと東京創元社」笠井潔、北村薫、田口俊樹、辻真先、エドワード・ケアリー 「矢吹シリーズ全十作が黄色の背表紙で揃うところ…
『雪密室』法月綸太郎(講談社文庫) 法月綸太郎の第二作。1989年親本発行。法月父子の初登場作品です。 冒頭に置かれた「引き裂かれたエピローグ」で、結婚式を控えた花嫁のところに綸太郎が大切なひとの逮捕を告げに来るところから始まります。のちのロス…
『ドラキュラ紀元一九五九 ドラキュラのチャチャチャ』キム・ニューマン/鍛冶靖子訳(アトリエサード) 『Anno Dracula 1959: Dracula Cha Cha Cha』Kim Newman,1998, 2018年。 創元推理文庫から出ていた『ドラキュラ崩御』に、中篇「アクエリアス」を併録…
『爆弾魔 続・新アラビア夜話』R・L・スティーヴンソン&ファニー・スティーヴンソン/南條竹則訳(国書刊行会) 『More New Arabian Nights: The Dynamiter』Robert Louis Stevenson and Fanny van de Grift Stevenson,1885年。 『新アラビア夜話』第一…
『私立霧舎学園ミステリ白書 六月はイニシャルトークDE連続誘拐』霧舎巧(講談社ノベルス) 霧舎学園シリーズ三作目。 前作での予告(?)通り、密室・アリバイに続いて誘拐ものです。 図書委員の三年生中込椎名が琴葉に会いに来た。図書館にいつの間にか『…