『クドリャフカの順番』米澤穂信(角川文庫)★★★☆☆

『Welcome to KANYA FESTA!』2005年。 ついに部誌の文集『氷菓』が完成し、初期三部作も文化祭とともに幕を閉じました。 古典部員は「カンヤ祭」の名称を使わないことにしているはずですが、英題が「KANYA FESTA」となっているところからすると、『氷菓』販…

『愚者のエンドロール』米澤穂信(角川文庫)★★★★☆

『Why didn't she ask EBA?』2002年。 古典部シリーズ第二作。 二年F組が文化祭の演し物で作ることになったミステリー映画は、脚本家の本郷真由が急病になってしまい結末が不明のまま。そこで白羽の矢を立てられたのが、映画プロジェクトの代表者・入須冬美…

『氷菓』米澤穂信(角川文庫)★★★★☆

『氷菓』米澤穂信(角川文庫) 『You can't escape』2001年。 古典部シリーズをまとめて読もうと思ったものの、設定を忘れていたので第一作を読み直しました。 現在は英題が『The niece of time』に変更されているそうです。「時の娘」ならぬ「時の姪」、真…

『月が昇るとき』グラディス・ミッチェル/好野理恵訳(晶文社ミステリ)★★☆☆☆

『月が昇るとき』グラディス・ミッチェル/好野理恵訳(晶文社ミステリ) 『The Rising of the Moon』Gladys Mitchell,1945年。 サイモンとキースの兄弟が町に来たサーカスを楽しみにしていたとき、サーカスの女芸人がメッタ刺しにして殺されるという事件が…

『夏、19歳の肖像 新装版』島田荘司(文春文庫)★★☆☆☆

『夏、19歳の肖像 新装版』島田荘司(文春文庫) 昭和! 青春の甘酸っぱさよりも、昭和のおっさん臭さを感じてしまいました。実際、三十代の男が十五年前を回想しているという設定なので、おっさん臭いのも仕方ありません。 入院中に窓の外の家を覗き見ると…

『世界ショートショート傑作選1』各務三郎編(講談社文庫)★★★★☆

『世界ショートショート傑作選1』各務三郎編(講談社文庫) 1978年初刊。 「クライム&ミステリー」「走れ、ウィリー」ヘンリー・スレッサー/矢野浩三郎訳(Run, Willie Run,Henry Slesar,1959)★★★★★ ――ウィリーは監房の寝床に腰かけて、足を前後に動か…

『緋の堕胎 ミステリ短篇傑作選』戸川昌子/日下三蔵編(ちくま文庫)★★★☆☆

『緋の堕胎 ミステリ短篇傑作選』戸川昌子/日下三蔵編(ちくま文庫) 創元・中公の小泉喜美子やちくまの仁木悦子に続いて刊行された、同じ日下三蔵編による戸川昌子の傑作選です。戸川昌子は『大いなる幻影』『火の接吻』『蜃気楼の帯』を読んだことがあり…

『黒いアリバイ』ウィリアム・アイリッシュ/稲葉明雄訳(創元推理文庫)★★★★☆

『黒いアリバイ』ウィリアム・アイリッシュ/稲葉明雄訳(創元推理文庫) 『Black Alibi』Cornell Woolrich,1942年。 『黒衣の花嫁』『黒いカーテン』に続く〈ブラックもの〉の第三作です。 目次が被害者名になっており、『黒衣の花嫁』『喪服のランデヴー…

『幸福手配師パーカー・パイン』アガサ・クリスティ/小西宏訳(グーテンベルク21)★☆☆☆☆

『幸福手配師パーカー・パイン』アガサ・クリスティ/小西宏訳(グーテンベルク21) 『Parker Pyne Investigates』Agatha Christie,1934年。 訳者名からすると、創元推理文庫『パーカー・パインの事件簿』旧版の電子版のようです。パロディ的要素の強い前半…

『首のない女』クレイトン・ロースン/白須清美訳/山口雅也製作総指揮(原書房 海外ミステリ叢書〈奇想天外の本棚〉)★★☆☆☆

『首のない女』クレイトン・ロースン/白須清美訳/山口雅也製作総指揮(原書房 海外ミステリ叢書〈奇想天外の本棚〉) 『The Headless Lady』Clayton Rawson,1940年。 ロースンは大好きな作家で、長らく創元推理文庫版が絶版のまま復刊もされずにいたので…

『死体が多すぎる 修道士カドフェル2』エリス・ピーターズ/大出健訳(光文社文庫)★★☆☆☆

『死体が多すぎる 修道士カドフェル2』エリス・ピーターズ/大出健訳(光文社文庫) 『One Corpse Too Many』Ellis Peters,1979年。 喜国雅彦『本格力』で紹介されていたあらすじを読んで面白そうだと感じ、登場人物が魅力的という評価にも惹かれて読んで…

『ぬりかべ同心判じ控』倉阪鬼一郎(幻冬舎時代小説文庫)★★★☆☆

『ぬりかべ同心判じ控』倉阪鬼一郎(幻冬舎時代小説文庫) 2019年、文庫書き下ろし。 同じ幻冬舎文庫の『からくり亭の推し理』に続く、時代本格ミステリの第二弾のようです。とはいってもシリーズではなく別物ですが。 ぬりかべのようにでかくて判じ物が得意…

『からくり亭の推し理』倉阪鬼一郎(幻冬舎時代小説文庫)★☆☆☆☆

『からくり亭の推し理』倉阪鬼一郎(幻冬舎時代小説文庫) 時代小説と本格ミステリの融合だと期待していたのですが、ミステリとしては珍品もいいところでした。 「第一話 龍を探せ」 ――上総屋のあるじが龍と書かれた紙を握り締めて恐怖のあまり死んでいた。…

『魔術師』佐々木俊介(2016)★★★☆☆

『魔術師』佐々木俊介(2016) 著者Webページ(→https://s-mystery.net/club/ 旧http://vanish2018.jp/)で公開されていたものです。 鮎川哲也賞佳作となったスリーピング・マーダーものの青春ミステリ『繭の夏』の著者による、ゴシックミステリです。 一代…

『今昔百鬼拾遺 天狗』京極夏彦(新潮文庫)★★☆☆☆

『今昔百鬼拾遺 天狗』京極夏彦(新潮文庫) 中禅寺敦子と呉美由紀の登場する今昔百鬼拾遺シリーズ第三弾。本書には「鳴釜」のお嬢様・篠村美弥子が登場します。 「天狗になる」にちなんで「高慢」がらみの台詞が各章を彩っていました。 山で陥穽に落ちて遭…

『今昔百鬼拾遺 河童』京極夏彦(角川文庫)★★★☆☆

『今昔百鬼拾遺 河童』京極夏彦(角川文庫) 初出媒体が『幽』『怪』だったためか、冒頭から女学生による河童談義が始まります。多々良先生も登場して、全篇にわたって久しぶりの妖怪蘊蓄が披露されていました。とは言っても掘り下げられたものではなく、河…

『今昔百鬼拾遺 鬼』京極夏彦(講談社タイガ)★★★☆☆

『今昔百鬼拾遺 鬼』京極夏彦(講談社タイガ)★★★☆☆ 2018年のweb連載を書籍化したもの。2019年初刊。 長篇では『邪魅の雫』以来の百鬼夜行シリーズ新作になります。とはいうものの京極堂は登場せず、主人公は京極堂の妹・敦子と『絡新婦の理』の呉美由紀が務…

『毒薬の輪舞』泡坂妻夫(河出文庫)★★★☆☆

『毒薬の輪舞』泡坂妻夫(河出文庫) 1990年初刊。 小湊刑事が患者として精神病院を訪れるという衝撃的な幕開けで始まりますが、そこはもちろん潜入捜査(?)であることはすぐにわかります。 まったく開けられていない清涼飲料水の缶のなかに異物を入れるこ…

『血の季節』小泉喜美子(宝島社文庫)★★★★☆

『血の季節』小泉喜美子(宝島社文庫) 1982年初刊作品の復刊です。 小泉喜美子が1934(昭和9)年生まれということにびっくり。戦前生まれだったとは。 殺人犯が女の子に興味を持つようになったきっかけを精神科医に語った幼少期から青年期にかけてのパート…

『死者の輪舞』泡坂妻夫(河出文庫)★★★☆☆

『死者の輪舞』泡坂妻夫(河出文庫) 初刊1985年。 カバー型帯が付いていて、イメージキャラクターがなぜか遠藤憲一。でも海方は海亀のような見た目なので、爬虫類顔は実はぴったりかも。 カバー写真がドミノになっていてタイトルが「輪舞」ということからも…

『ホームズ、ニッポンへ行く ホームズ万国博覧会インド篇』ヴァスデーヴ・ムルティ(アキラ・ヤマシタ)/寺井杏里訳(国書刊行会)★★☆☆☆

『ホームズ、ニッポンへ行く ホームズ万国博覧会インド篇』ヴァスデーヴ・ムルティ(アキラ・ヤマシタ)/寺井杏里訳(国書刊行会) 『Sherlock Holmes in Japan』Vasudev Murthy,2013年。 この〈ホームズ万国博覧会〉シリーズには、ほかに中国篇とロシア篇…

『妖盗S79号』泡坂妻夫(河出文庫)★★★★★

『妖盗S79号』泡坂妻夫(河出文庫)「第一話 ルビーは火」(1979)★★★★★ ――会社が倒産して無職になった松本は、海水浴場の監視員のアルバイトをすることになった。そのうち常連に気づいた。まずは学生の四人連れだ。それからオープンシャツを着た初老の二人…

『リボルバー・リリー』長浦京(講談社文庫)★★★★☆

『リボルバー・リリー』長浦京(講談社文庫) 2016年刊行。 大正時代の日本を舞台に、幣原機関でスパイとして育てられた女性が陸軍横領犯の息子を守るために、陸軍とヤクザと幣原の後輩を相手にひたすら格闘と銃撃戦を繰り広げる物語です。 文庫にして640ペ…

『教場』長岡弘樹(小学館文庫)★★★★★

『教場』長岡弘樹(小学館文庫) 2013年親本初刊。 どういう経緯で読もうと思ったのか忘れてしまいました。『ミステリマガジン』で紹介されていたのだったっけな? 警察学校を舞台にした作品ですが、思っていたのとは違っていました。一つには長篇ではなく連…

『アガサ・クリスティー完全攻略[決定版]』霜月蒼(ハヤカワ・クリスティー文庫)★★★★★

『アガサ・クリスティー完全攻略[決定版]』霜月蒼(ハヤカワ・クリスティー文庫) 翻訳ミステリー大賞シンジケートで連載されていたものの書籍化の増補文庫版。クリスティー全作書評。本格プロパーではないからこその、曇りのない純粋な読み方が小気味よい…

『完全殺人事件』クリストファ・ブッシュ/中村能三訳(創元推理文庫)★★☆☆☆

『完全殺人事件』クリストファ・ブッシュ/中村能三訳(創元推理文庫) 『The Perfect Murder Case』Christopher Bush,1929年。 喜国雅彦『本格力』で「トリックのおかげで、読後感の深みが増したわけで」「その深み、島田荘司氏の作品を読んだときに感じる…

『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』喜国雅彦・国樹由香(講談社)★★★★☆

『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』喜国雅彦・国樹由香(講談社) 2007年から2016年まで『メフィスト』に連載されていた古典ミステリのガイド本。現代の若者が読んで面白い作品という視点で博士と高校生りっちゃんがやりとりする「H-1グランプリ…

『屋上』島田荘司(講談社文庫)★★★★☆

『屋上』島田荘司(講談社文庫) 『屋上の道化たち』(2016)の改題文庫化です。 U銀行の屋上には、作者をはじめ関係者が次々と怪死しているという曰くつきの盆栽が並べられていました。ある日、行員の岩木俊子が盆栽に水をやりに屋上に行って転落死します…

『仮面幻戯』佐々木俊介(東京創元社Webミステリーズ!)★★★☆☆

『仮面幻戯』佐々木俊介(東京創元社Webミステリーズ!) 回想の殺人ものの青春ミステリ『繭の夏』の著者によるWeb連載です。2010年にWebミステリーズ!(→→)で連載され、現在のところ書籍化はされていません。長篇ではなく、工芸家・藤江恭一郎が作った仮…

『還りの会で言ってやる』八重野統摩(メディアワークス文庫)★★★★☆

『還りの会で言ってやる』八重野統摩(メディアワークス文庫) ミステリ・フロンティアから刊行されている『ペンギンは空を見上げる』が面白かったので、デビュー作である本書も読んでみました。2012年刊行。 タイトルからてっきり小学生の話だと思っていた…


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