『屋上』島田荘司(講談社文庫)★★★★☆

『屋上』島田荘司(講談社文庫) 『屋上の道化たち』(2016)の改題文庫化です。 U銀行の屋上には、作者をはじめ関係者が次々と怪死しているという曰くつきの盆栽が並べられていました。ある日、行員の岩木俊子が盆栽に水をやりに屋上に行って転落死します…

『仮面幻戯』佐々木俊介(東京創元社Webミステリーズ!)★★★☆☆

『仮面幻戯』佐々木俊介(東京創元社Webミステリーズ!) 回想の殺人ものの青春ミステリ『繭の夏』の著者によるWeb連載です。2010年にWebミステリーズ!(→→)で連載され、現在のところ書籍化はされていません。長篇ではなく、工芸家・藤江恭一郎が作った仮…

『還りの会で言ってやる』八重野統摩(メディアワークス文庫)★★★★☆

『還りの会で言ってやる』八重野統摩(メディアワークス文庫) ミステリ・フロンティアから刊行されている『ペンギンは空を見上げる』が面白かったので、デビュー作である本書も読んでみました。2012年刊行。 タイトルからてっきり小学生の話だと思っていた…

『ゴーグル男の怪』島田荘司(新潮文庫)★★★★☆

『ゴーグル男の怪』島田荘司(新潮文庫) 解説にもあらすじにも一切書かれてはいませんが、2011年のNHKドラマ『探偵Xからの挑戦状!』の同名原作をもとに加筆して長篇化したものです。 ドラマ原作集に収録されていた短篇の方は、何が何でも奇想を見せちゃる…

『キャッツ・アイ』R・オースティン・フリーマン/渕上痩平訳(ちくま文庫)★★☆☆☆

『キャッツ・アイ』R・オースティン・フリーマン/渕上痩平訳(ちくま文庫) 『The Cat's Eye』R. Austin Freeman,1923年。 語り手アンスティが偶然遭遇した銃殺事件。盗まれていたのは価値のない宝石だけ。犯人は指紋を残しており逮捕は容易かと思われた…

『あやかしの裏通り』ポール・アルテ/平岡敦訳(行舟出版)★☆☆☆☆

『あやかしの裏通り』ポール・アルテ/平岡敦訳(行舟出版) 『La Ruelle fantôme』Paul Halter,2005年。 日本では初となるオーウェン・バーンズものの翻訳です。 舞台は1902年のロンドン。ホームズ引退間近の時代ですね。 いかがわしい路地に迷い込んで殺…

『だから殺せなかった』一本木透(東京創元社)★★★★☆

『だから殺せなかった』一本木透(東京創元社) 各種ベストテンにランクインした「『屍人荘の殺人』と栄冠を争った第27回鮎川哲也賞優秀賞受賞作」。 「おれは首都圏連続殺人事件の真犯人だ」大手新聞社の社会部記者に宛てて届いた一通の手紙。そこには、首…

『みんなの少年探偵団2』有栖川有栖他(ポプラ文庫)★★★☆☆

『みんなの少年探偵団2』有栖川有栖他(ポプラ文庫)「未来人F」有栖川有栖(2016)★★☆☆☆ ――明智先生がアメリカに行っている間に、せっかく捕まえていた二十面相にだつごくされてしまいました。数日後、「未来人F」をなのる男がラジオにしゅつえんし、国…

『贖罪』湊かなえ(東京創元社)★★★★☆

十五年前に起こった殺人事件。 沙英・真紀・晶子・由佳が小学四年生のときです。空気のきれいな田舎町に機械工場ができて余所からたくさんの人が引っ越してきました。そうして工場の責任者の娘エミリが四人に加わり五人で遊ぶようになります。五人が夏休みの…

『猫が足りない』沢村凜(双葉文庫)★★★★☆

印象的なタイトルです。 どんな意味かと読み進めてゆくと、わかりやすく言えば「猫成分が足りない」――猫が好きすぎてほとんどサイコパスな主人公の心情を指す言葉でした。主人公がサイコパス気味なのも当然、解説を読むともともとの出発点が「ピカレスクを」…

『連城三紀彦レジェンド2 傑作ミステリー集』綾辻行人・伊坂幸太郎・小野不由美・米澤穂信編(講談社文庫)★★★★☆

四人の選者による連城ミステリ傑作選第二集。巻末対談には米澤も参加して鼎談に。 「ぼくを見つけて」(1989)★★★★☆ ――「はい、一一〇番です」「ぼく、ユーカイされてるみたいです。ハンニンがいないので電話しました。たすけてください」イシグロケンイチと…

『九人と死で十人だ』カーター・ディクスン/駒月雅子訳(創元推理文庫)★★★★☆

『Nine --and the Death Makes Ten』Carter Dickson,1940年。 船上という限定された状況のなかで起こった殺人事件の、真相も実にシンプルで、一つの謎が明らかになると途端にほぼすべての謎が氷解するのが爽快です。シンプルな謎解きがうまく決まった中期の…

『探偵は教室にいない』川澄浩平(東京創元社)★★★★☆

第28回鮎川哲也賞受賞作。久しぶりに日常の謎らしい日常の謎です。あまりに日常的な疑問すぎて一見すると推理のとっかかりもなさそうなのに、些細な手がかりから明快な真相が導き出されるのは、見事としか言いようがありません。 登場人物は随分と大人びてい…

『シャーロック・ホームズの栄冠』北原尚彦編訳(創元推理文庫)★★★☆☆

「第I部 王道篇」「一等車の秘密」ロナルド・A・ノックス(The Adventure of the First-Class Carriage,Ronald A. Knox,1947)★★★★☆ ――リューマチで仕事を辞めたヘネシー夫妻は、田舎屋敷の番小屋に住み込み、スウィシンバンク夫妻の世話をすることにな…

『福家警部補の再訪』大倉崇裕(創元推理文庫)★★★☆☆

福家警部補シリーズ第二集。第一話の切れ味が一番よかったため、やや尻すぼみな印象でした。「倒叙ミステリ」についての解説者の考察が腑に落ちます。 「マックス号事件」(2006)★★★☆☆ ――豪華客船マックス号の船室内で、原田はかつて恐喝の相棒だった直巳を…

『鳥居の密室 世界にただ一人のサンタクロース』島田荘司(新潮社)★☆☆☆☆

京大時代の御手洗が登場する進々堂シリーズの長篇です。 数ある御手洗もの長篇のなかでもぶっちぎりの失敗作でした。 ぼくという語り手が透明すぎて存在感がなく、地の文でも心情をほとんど発することがないため、小説といよりも御手洗の台詞だけが書かれた…

『7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー』文芸第三出版部編(講談社ノベルス)★★☆☆☆

新本格30周年を記念した〈名探偵〉がテーマの書き下ろしアンソロジー。シリーズ探偵を登場させたのは7人中4人。そのうえ真剣に取り組んだ作品というよりもお祭り用のやっつけ仕事が多く期待はずれでした。 「水曜日と金曜日が嫌い――大鏡家殺人事件――」麻耶…

『連城三紀彦レジェンド 傑作ミステリー集』綾辻行人他編(講談社文庫)★★★★☆

綾辻行人・伊坂幸太郎・小野不由美・米澤穂信それぞれの一押しと、第二第三候補のなかから綾辻・伊坂が相談して決めた二篇を収録。 「依子の日記」(1980)★★★☆☆ ――殺人。私から夫までも奪おうとしているあの女を殺害する以外にもう残された道はない。辻井薫…

『悪女イヴ』ジェイムズ・ハドリー・チェイス/小西宏訳(創元推理文庫)★★★★★

『Eve』James Hadley Chase,1945年。 悪女ものには最低限ふたつの要素が必要でしょう。男を絡め取る魅力のあるファム・ファタールと、絡め取られるに相応しい弱みを持っている男です。 この『悪女イヴ』では悪女の魅力よりもとりわけ語り手クライヴ・サース…

『盲目の理髪師』ジョン・ディクスン・カー/三角和代訳(創元推理文庫)★☆☆☆☆

『The Blind Barber』John Dickson Carr,1934年。 新訳を機に読み返してみましたが、やはりしんどかったです。新訳のおかげで笑いどころがわかりやすくなっていることを期待していたのですが、台詞が新しく軽くなったせいで空々しさが際立つ結果になってい…

『葬式組曲』天祢涼(双葉文庫)★★★☆☆

政府により葬式が禁じられ、直葬が当たり前になった世界で、唯一葬式の伝統が残された県で葬儀社が執りおこなう葬儀の顛末を描いた連作ミステリです。 デビュー作の『キョウカンカク』が素晴らしかっただけに、著者には過度な期待を持ってしまいます。それで…

『粘土の犬 仁木悦子傑作短篇集』仁木悦子(中公文庫)★★☆☆☆

なぜか中公文庫から日下三蔵編のミステリ短篇集がいろいろと出ています。第一短編集『粘土の犬』と第二短篇集『赤い痕』の合本。 「かあちゃんは犯人じゃない」(1958)★★☆☆☆ ――とうちゃんが昼寝している間に、昨日どなっていたシャボンを見つけ、ズボンのポ…

『ペンギンは空を見上げる』八重野統摩(東京創元社 ミステリ・フロンティア)★★★★☆

とてもいびつなのに実は隅々まで計算され尽くした作品でした。 主人公は宇宙に憧れているのに宇宙飛行士ではなくエンジニアを目指しています。確かに考え方としてはありかもしれませんが小学生の発想とは思えません。 過去に何かあったらしいとはいえ、同級…

『奇想天外 21世紀版 アンソロジー』山口雅也編著(南雲堂)★★☆☆☆

自分好みの雑誌を作りあげるのは編者の特権ですが、自分語りが頻繁に顔を出すのは勘弁してほしかったところです。 「21世紀版奇想天外小説傑作選[海外篇]」「最上階に潜むもの」アーサー・モリスン/宮脇孝雄訳(The Thing in the Upper Room,Arthur Morr…

『友達以上探偵未満』麻耶雄嵩(角川書店)★★★☆☆

著者にしてはとんがってもいないし、犯人当ての趣向ゆえか問題編も地味だし、どういう作品なんだろうこれは……?と訝しみながら読み進めてゆきましたが、最後まで読めば派手でこそないもののやはり著者らしい一筋縄ではいかない作品でした。 「伊賀の里殺人事…

『龍の耳を君に デフ・ヴォイス新章』丸山正樹(東京創元社)★★☆☆☆

手話通訳士である荒井を主人公にした『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』の続編。「騒ぐな、金を出せ」と脅して強盗を働いたかどで起訴されたろう者の裁判を描く第1話「弁護側の証人」、ろう者を狙うろう者の犯罪者集団の取り調べに呼ばれる第2話「風の記…

『涙香迷宮』竹本健治(講談社文庫)★★☆☆☆

囲碁シリーズの最新作?。作中時間がどうなっているのかわかりません。サザエさん方式と一緒で、登場人物は歳を取らないのに時代だけが進んでいるという設定でしょうか。智久君は18歳なのにスマホが存在してるし、登場人物の会話のノリは若作りしたおっさん…

『痛みかたみ妬み 小泉喜美子傑作短篇集』小泉喜美子(中公文庫)★★★☆☆

双葉社から出版されていた『痛みかたみ妬み』全篇に、『またたかない星』収録作から『殺さずにはいられない』には未収録の2篇と、『小説ジュニア』掲載の単行本未収録作2篇を加えた増補復刊短篇集とのこと(解説より)。 「痛み La Peine」(1978)★★★☆☆ ―…

『キャプテンサンダーボルト』(上・下)阿部和重・伊坂幸太郎(文春文庫)★★★★★

意外な組み合わせの合作は、意外なほどにエンターテインメントに振り切ったものでした。何しろタイトルとなっているキャプテン・サンダーボルトというのはオーストラリアに実在した義賊の通り名であり、主人公たちが子どものころ観たイーストウッド主演の映…

『緑ヶ丘小学校大運動会』森谷明子(双葉文庫)★★★☆☆

運動会のプログラム仕立ての目次からもわかるとおり、運動会当日の一日の出来事が描かれています。いいですね、こういうの。 来賓室の優勝杯のなかに降圧剤の入ったピルケースがあるのを見つけたところまでは、まだ日常の不思議の範疇でした。小学生たちが「…


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