『Las Cartas y una Selecsión de Poemas de Sor Juana de la Cruz』Sor Juana Inés de la Cruz。 スペイン語圏及びアメリカでは名高い17世紀メキシコの詩人、とのこと。 だけど編集方針に釈然としない。 詩がちょびっとだけで、あとは手紙と解説ってのは……?…
『The Call of the Wild』Jack London,1903年。動物ものとか子供ものとか難病ものとか、取りあえず作品中にそういう要素をぶっこんでおけば的な作品が多いジャンルなので、あんまり期待してなかったんだけど、かなり面白い。 男《おっとこ》くさい犬ハード…
読む前は、別に新訳しなくても白水社の新訳カフカ・コレクションでいいんじゃないの?と思っていたのだけれど、実際に読んでみたら全然違う。ドイツ語は読めないからあれなんだけど、訳文を読み比べただけでも、池内訳はかなりざっくりしてます。プロの翻訳…
『New Arabian Nights』Robert Louis Stevenson,1882年。 義侠心に富む若者とおバカな若者が、ものの見事に事件に巻き込まれる嘘っぽい話なのに、取って付けたような「アラビア人の著者」の枠組みを借りることで筋の通った作品になってます。 ただ、最初の…
『Die Zukunft einer Illusion/Das un behagen in der Kultur/Der Mann Moses und die Monotheistische Religion』Sigmund Freud,1927、1930、1939年。 カップリングの妙です。 「幻想の未来」を読むと、宗教と心霊主義を同列に扱っていたり、例のごとく…
『Le Rouge et le Noir』Stendhal,1830年。 上巻以上に魅力的な人物がたくさん出てきます。暇つぶしにジュリヤン相手に気まぐれを起こすラ・モール侯爵とか、間違えて喧嘩をふっかけられるボーヴォワジ従男爵とか、一緒に馬で散歩する変り者のノルベール伯…
『Le Rouge et le Noir』Stendhal,1830年。 いくつかの層があるからいろんな楽しみ方ができるのだけれど、前半部分は今となってはユーモア小説だなあ。 ジュリヤン・ソレル。自尊心が高くて施しを侮辱と受け取るくせに、欲しい本があったら金持にたかるカワ…
なにゆえヘミングウェイの訳を金原瑞人に? どう考えてもミスキャスティングなのでは……。 ヤングアダルトにヘミングウェイを読んでもらいたいってことなのかな。 こういう癖のない文体で簡潔な文章を訳されると、ちょっと締まりがなくなっちゃうんだけどなぁ…
どうもわたしはホイットマンというかホイットマンの日本語訳との相性が悪いので、新訳で期待したうちの一つだったんだけれど、やっぱり相性が悪かった。 こういうのこそ誰か詩人の人に超訳してもらいたい。 ----------- オンライン書店bk1で詳細を見る。 …
共感できるのがシャイロックのみというのは、シェイクスピアの意図したところなのだろうか。すべての登場人物が利己的で、人を小バカにすることで成り立つ笑いには不快感を覚えるだけだった。 当時の社会常識というのを差し引いてもかなりキツイ。シャイロッ…
いまいちだな。春樹訳キャッチャーなどを読むにつけても、やっぱり語り口調を訳すのって難しいんだと思う。
毎月楽しみにしている古典新訳文庫だけど、初めて通読に挫折した。。。 フィリパ・ピアスやケストナーやモンゴメリみたいに、大人が読んでも面白い児童文学はいくらでもあるし、これまでの古典新訳文庫にもそういう作品がいくつかあったんだけども……。 確か…
『Il colombre e altri racconti』Dino Buzzati。「天地創造」(La cerazione)★★★★☆ ――ようやく宇宙創造を終えた全能の神のもとに、技術者の一人が歩み寄ってきた。「若手グループで立案したプロジェクトをお見せしたいのです」 ノアの方舟に乗れなかった動…
著者略歴を読むかぎりでは完全に素人小説家なのだけれど、そこそこ面白い。 「大きな白い頭はそよ風に震え、手足はか弱かった。そのためだろうが、いつも仲間と横一列になって立ち、左右に体を揺らし、うるんだ目をしばたたかせていた」。これはクリダーとい…
『О Ленине』Лев Давидович Троцкий,1924年。 今になってようやくロシア語原典からの邦訳だというのだから驚く。 して、新訳する意義は?と問われるならば、スターリニズムとアンチ=スターリニズムのフィルターを掛けられていないレーニン像の提出(再提出…
新潮文庫『ヴェニスに死す』でむかし読んだはずだから、再読になります。「新訳」ならではという箇所は特に感じませんでした。 ト書きと心理的ト書きとでもいうような文章が交互にえんえんと続くという、とんでもない小説であります。 じじいの目には世界は…
おかしな話に聞こえるが、冒頭を読んで真っ先に思い浮かべたのが、クノー『文体練習』だった。 子どもたちの雪合戦。兄貴的な子どもと弱々しい子ども。怪我。教師に呼び出される。相手を必死でかばう主人公。 これだけならケストナー『飛ぶ教室』の一場面で…
『Puck of Pook's Hill』Rudyard Kipling,1906年。 わたしはこういう語り部タイプの物語は苦手なはずなのだけれど、これはわくわくしてしょうがなかった。不思議だな。 パックたちの引きのテクニックにも思わず引き込まれてしまう(^_^)。続きはまた……な…
『Julius Caesar』William Shakespeare。 安西訳シェイクスピア第二弾。 愚かな民衆、純粋なシーザーとブルータス、賢しらな政治家アントニー。武人の時代から政治家の時代へ。という話だと思っていたら、「演技者としてのブルータス」なる解題があって蒙を…
『On Liberty』John Stuart Mill,1859年。 ありゃ。期待はずれです。amazonなどでは評判がいいようだが、わたしには読みづらかったぞ。何というか、論理的な文章をこういうやわらかい文章で訳されると、読むテンポが悪くなっていらいらさせられるのだ。もっ…
『The Pciture of Dorian Gray』Oscar Wilde,1891年。 ただの世間知らずの美少年だと思えていたドリアン・グレイが、突如として芸術至上主義者になったかのごとく豹変する第7章は圧巻です。それまでは、まあ言っても高等遊民のお気楽思想談義に見えなくも…
落語調の翻訳だなんて狙い過ぎだと思ってましたが、けっこうはまっていて驚きました。 『Нос/Ревизор/Шинель』Николай Васильевич Гоголь。「鼻」(Нос)★★★★★ ――なんでも、三月二十五日にペテルブルクで奇妙きてれつな事件が起こったそうであります。床屋…
帯に「あふれんばかりの豊かな語彙で訳された」とあったので、いかにも大衆小説らしい猥雑として雑然とした感じを期待していたのだが、見事に裏切られた。ところどころで小難しい漢字を使っているだけの翻訳であった。文章自体が下手だとかいうのではない。…
『Империализм』Н. Ленин,1917年。 はじめに刊行予定のリストを見たときは、今さらレーニン?と思った。しかも帝国主義とは時代遅れな。確かにこの手の本の旧訳はひどいものが多いのだろうけれど……。 ところがまず解説を読んでみて、己の不明を恥じました。…
『L'enfant de la Haute Mer』Jules Supervielle,1931年。「海に住む少女」(L'enfant de la Haute Mer)★★★★★ ――船が近づくと、町はまるごと波の下に消えてしまいます。そこにひとりぼっちで暮らす、十二歳くらいの少女。この町には何も、そして誰もやって…
訳は読みやすいし、連想の糸をたぐるようにテーマをしぼって編んでいるので、初心者にも入りやすい。解説もわかりやすすぎなほどわかりやすい。「黒猫」(The Black Cat,1843)★★★★☆ ――わが家には鳥がいて、金魚がいて、犬がいて、そして猫がいた。プルート…
「イワン・イリイチの死」(Смерть Ивана Ильича,1886)★★★★☆ こまった。なんだこの回りくどい文章は。。。と最初は思いましたよ、はい。「妻が、イワン・イリイチからすると何の理由もなく、つまり彼のいわゆるただの気まぐれから、生活の楽しみと品位を壊…
『Novelle Fatte A Macchina』Gianni Rodari,1973年。「猫とともに去りぬ」(Vado via con i gatti)★★☆☆☆ ――「どうやらこの家には年金生活者の居場所はないらしい。こうなったら出てってやる。猫といっしょに暮らすんだ」 いかにも人生訓・寓話めいた巻頭…
孤独なジョニー、弱虫のウーリ、読書家ゼバスティアン、正義感の強いマルティン、いつも腹をすかせている腕っぷしの強いマティアス。同じ寄宿舎で生活する5人の少年が友情を育み、信頼を学び、大人たちに見守られながら成長していく感動的な物語。ドイツの…
生田訳バタイユは難解という印象があった。というわけで、新訳はいかに?と思い読んでみました。意外なことに生田訳って読みやすかったんだなあというのが率直な感想。新訳だけに自然で読みやすい一方で、原文の持つ「論理の愚直なまでの道すじ」を回復した…