『影のオンブリア』パトリシア・A・マキリップ/井辻朱美訳(ハヤカワ文庫FT)★★★☆☆

SF

『影のオンブリア』パトリシア・A・マキリップ/井辻朱美訳(ハヤカワ文庫FT) 『Ombria in Shadow』Patricia A. McKillip,2002年。 2003年度世界幻想文学大賞受賞作。〈プラチナ・ファンタジイ〉の一冊です。 いわゆるファンタジーらしいファンタジーで…

『本と幸せ』北村薫(新潮社)★★★☆☆

『本と幸せ』北村薫(新潮社)★★★☆☆ 自作朗読CD付き。 各種媒体に発表された短めの書評が中心となっているので、通常のエッセイ集だと思って読むと統一感もないし、内容的に物足りなさを感じる文章もありました。 それはそれとして。 北村薫の文章をいつか…

『ミステリマガジン』2023年1月号No.756【ミステリが読みたい!2023年版】

『ミステリマガジン』2023年1月号No.756【ミステリが読みたい!2023年版】 ものの見事に知らない作品ばかりで驚きました。ミステリマガジンは書評欄も含めて毎号読んでいるはずなのに。自分のアンテナの感度の低さに呆然とします。『同志少女』は本誌で冒頭…

『バスカヴィル家の犬』コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫)★★★☆☆

『バスカヴィル家の犬』コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫) 『The Hound of the Baskervilles』Arthur Conan Doyle,1901年。 ドイルが「最後の事件」でホームズを殺してから「空家の冒険」で復活するまでのあいだに書かれた長篇作品で、「最後の事件」以…

『サブマリン』伊坂幸太郎(講談社文庫)★★★☆☆

『サブマリン』伊坂幸太郎(講談社文庫) 同じ講談社から出ている『チルドレン』のシリーズ第二作です。 本書を読んでもフィクションならではのすっきりした爽快感はありません。勧善懲悪でもハッピーエンドでもなく、もやもやが残ります。 悪い人たちではな…

『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』シオドラ・ゴス/鈴木潤他訳(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ5048)★★★☆☆

SF

『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』シオドラ・ゴス/鈴木潤他訳(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ5048) 『The Strange Case of the Alchemist's Daughter』Theodora Goss,2017年。 即物的な邦題ですが、同じく素っ気ない原題は『ジキル博…

『アスペクツ・オブ・ラブ ガーネット傑作集II』デイヴィッド・ガーネット/新庄哲夫訳(河出書房新社)★★★★☆

『アスペクツ・オブ・ラブ ガーネット傑作集II』デイヴィッド・ガーネット/新庄哲夫訳(河出書房新社)★★★★☆『Aspects of Love』David Garnett,1955年。 舞台が散々な結果となり、次の舞台まで文無しで過ごさなければならなくなった女優のローズは、熱心な…

『ゲームの王国』(上・下)小川哲(ハヤカワ文庫JA)★★★★★

SF

『ゲームの王国』(上・下)小川哲(ハヤカワ文庫JA)★★★★★ 2017年親本刊行。 政治家や警官の腐敗と共産主義者への弾圧が著しい1956年のカンボジア。高校の歴史科教師サロト・サルは、革命組織を新たに作り直そうとしていた。同じころ、郵便局員ニュオン・…

『最後に鴉がやってくる』イタロ・カルヴィーノ/関口英子訳(国書刊行会 短篇小説の快楽)★★☆☆☆

『最後に鴉がやってくる』イタロ・カルヴィーノ/関口英子訳(国書刊行会 短篇小説の快楽) 『Ultimo viene il corvo』Italo Calvino,1949年。 カルヴィーノの第一短篇集から邦訳のあるものと趣が異なるものを除き、1958年の『短篇集』より「工場のめんどり…

『漂砂のうたう』木内昇(集英社文庫)★★★★☆

『漂砂のうたう』木内昇(集英社文庫) 2010年初刊。第144回直木賞受賞作。 273ページ登場人物の台詞に、どんなにシンとしていても川や海の底では水の流れに乗って砂は動いている――とあるように、タイトルの漂砂とは底辺で暮らす人々の謂です。維新後の明治…

『小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集』桜庭一樹(集英社)★★★☆☆

『小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集』桜庭一樹(集英社) 各種媒体に発表した解説、読書日記、書評、対談を収録。 「解説」 もっとも“重要な”少女小説ということで『甘い蜜の部屋』『第七官界彷徨』『聖少女』の名が挙げられていますが、「重要」の意味…

『あがない』倉数茂(河出書房新社)★★★★☆

『あがない』倉数茂(河出書房新社) 中篇1作と短篇1作を収録。 「あながい」(2020)★★★★☆ ――祐《たすく》が作業していた解体現場に若い男が倒れていた。救急車を呼び、それでおしまいのはずだった。給料日には解体業者の同僚・涼介が、友人のキャバ嬢ミ…

『マルドゥック・スクランブル The First Compression――圧縮/The Second Combustion――燃焼/The Third Exhaust――排気』冲方丁(ハヤカワ文庫JA)★★★★☆

SF

『マルドゥック・スクランブル The First Compression――圧縮/The Second Combustion――燃焼/The Third Exhaust――排気』冲方丁(ハヤカワ文庫JA) 冲方丁の出世作。2003年初刊。 少女娼婦ルーン=バロットは、作られた自身の登録情報にアクセスしてしまっ…

『プラ・バロック』結城充考(光文社文庫)★★★☆☆

『プラ・バロック』結城充考(光文社文庫) 親本は2009年初刊。2008年度の日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。 創元SF文庫から出ている『躯体上の翼』が面白かったので遡って読んでみました。 喉を割かれて殺されていた殺人現場に臨場した機動捜査隊のク…

『戦時大捜査網』岡田秀文(東京創元社)★★★★☆

『戦時大捜査網』岡田秀文(東京創元社)★★★★☆ 昭和十九年十一月、B29爆撃機による三度目の空襲に東京が見舞われた直後、隅田川沿いの倉庫で猟奇死体が見つかった。腹を割かれ内臓を引き出され、胃の内容物が持ち去られていた。死体が男装した女性のものだっ…

『アンチクリストの誕生』レオ・ペルッツ/垂野創一郎訳(ちくま文庫)★★★★☆

『アンチクリストの誕生』レオ・ペルッツ/垂野創一郎訳(ちくま文庫) 『Herr, erbarme Dich meiner!』Leo Perutz,1930年。 後の版には「Pour avoir bien servi」という短篇も追加収録されているようですが、恐らくは初版を底本にした本書には未収録です。…

『赤い右手』ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ/夏来健次訳(創元推理文庫)★☆☆☆☆

『赤い右手』ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ/夏来健次訳(創元推理文庫) 『The Red Right Hand』Joel Townsley Rogers,1945年。 喜国雅彦『本格力』で好評価だったので再読しましたが、やはりわたしにはまったく面白く感じられませんでした。 謎のう…

『推理は一日二時間まで』霧舎巧(光文社)★★☆☆☆

『推理は一日二時間まで』霧舎巧(光文社) 霧舎巧の現在のところ最新作、なのかな。(コスプレゆえのトリックを除けば)設定の面白さが活かされていないし、いくら日常の謎とはいえみみっちい真相が多いのもがっかりでした。 「推理は一日二時間まで」(201…

『アサギロ〜浅葱狼〜』(23)ヒラマツ・ミノル(小学館ゲッサン少年サンデーコミックス)

『アサギロ〜浅葱狼〜』(23)ヒラマツ・ミノル(小学館ゲッサン少年サンデーコミックス) 『アサギロ』という漫画はすごい。新選組を活き活きと描いているという点で『ゴールデンカムイ』と双璧を為します。 この漫画の特徴として、壬生浪士組や新選組の結…

『福家警部補の追及』大倉崇裕(創元推理文庫)★★★☆☆

『福家警部補の追及』大倉崇裕(創元推理文庫) 『Enter Lieutenant Fukuie For Checkmate』2015年。 福家警部補シリーズの第四集は中篇2編が収録されています。 「未完の頂上《ピーク》」(2014)★★★★☆ ――狩義之は十キロのザックを背負って石段を登り中津…

『P分署捜査班 集結』マウリツィオ・デ・ジョバンニ/直良和美訳(創元推理文庫)★★☆☆☆

『P分署捜査班 集結』マウリツィオ・デ・ジョバンニ/直良和美訳(創元推理文庫) 『I bastardi di Pizzofalcone』Maurizio de Giovanni,2013年。 イタリア発、21世紀の87分署というふれこみのシリーズ第一作です。はみ出しものたちの寄せ集めという設定か…

『シャーロック・ホームズの思い出』アーサー・コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫)★★★☆☆

『シャーロック・ホームズの思い出』アーサー・コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫) 『The Memoirs of Sherlock Holmes』Arthur Conan Doyle,1893年。 ホームズものの第二短篇集。 「白銀号事件」(The Silver Blaze,1892)★★☆☆☆ ――名馬白銀号が厩舎から…

『ディオゲネス変奏曲』陳浩基/稲村文吾訳(早川書房 ポケミス1942)★★★★☆

『ディオゲネス変奏曲』陳浩基/稲村文吾訳(早川書房 ポケミス1942) 『第歐根尼變奏曲』陳浩基,2019年。 香港の作家。部屋に籠って小説を書く物書きを樽のなかのディオゲネスになぞらえ、組曲の形で編纂した自選集です。さまざまなタイプの作品が収められ…

『不思議なシマ氏』小沼丹(幻戯書房 銀河叢書)★★★☆☆

『不思議なシマ氏』小沼丹(幻戯書房 銀河叢書)★★★☆☆ 小沼丹の単行本未収録作品のなかから娯楽作品を集めたもの。 「剽盗と横笛」(1947)★★☆☆☆ ――五か月ぶりに町に戻ってきた。「大沢殺しでとっつかまった野郎じゃねえか」。私は酒店を追い出された。私を…

『米澤穂信と古典部』米澤穂信(角川書店)★★★★☆

『米澤穂信と古典部』米澤穂信(角川書店) 「〈古典部〉シリーズ15年のあゆみ」 例えば「九マイルは遠すぎる」や「十三号独房の問題」ならすぐにわかるのですが、「やるべきことなら手短に」が「チェスタトンのような逆説のつもりで書いたかな」と言われる…

『平成怪奇小説傑作集1』東雅夫編(創元推理文庫)★★★☆☆

『平成怪奇小説傑作集1』東雅夫編(創元推理文庫) 『怪奇小説傑作集』の日本版だった『日本怪奇小説傑作集』の平成版です。平成にもなると怪奇小説の幅も広がって来たのか、いわゆる純粋な怪奇小説はあまりありません。ほとんどはよくて幻想小説、下手する…

『幻想と怪奇』11【ウィアード・ヒーローズ 冒険者、魔界を行く】

『幻想と怪奇』11【ウィアード・ヒーローズ 冒険者、魔界を行く】 失敗しました。毎号買っているのでよく内容を確かめもせず購入したところ、今回は苦手なヒロイック・ファンタジー特集でした。しかもジョー・R・ランズデールを除けば『ウィアード・テール…

『ミステリマガジン』2022年11月号No.755【CWA賞最前線】

『ミステリマガジン』2022年11月号No.755【CWA賞最前線】「2022年度CWA賞短篇賞ノミネート作品紹介」「2022年度CWA賞短篇賞受賞作レビュー」「2022年度CWA賞受賞作レビュー」「死者の指」M・W・クレイヴン/東野さやか訳(Dead Man's Fingers,M. W. Crave…

LINNEA「Krossad」(Cosmos Music)、Those Dancing Days『9-Year Anniversary (Remixes by Friends)』(Universal Music)

LINNEA「Krossad」(Cosmos Music)、Those Dancing Days『9-Year Anniversary (Remixes by Friends)』(Universal Music) 元ゾーズ・ダンシング・デイズのリネア・ヨンソンが今年の6月3日に、LINNEA名義で新曲をリリースしていたことを知りました。Sportsm…

『最初の接触 伊藤典夫翻訳SF傑作選』高橋良平編/マレイ・ラインスター他(ハヤカワ文庫SF)★☆☆☆☆

『最初の接触 伊藤典夫翻訳SF傑作選』高橋良平編/マレイ・ラインスター他(ハヤカワ文庫SF) 『ボロゴーヴはミムジイ』に続く、伊藤典夫訳SFマガジン傑作選の第2集。「最初の接触」を除きすべて1950年代の作品で訳載も60年代と、とにかく古い。 「最…


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