『Captain Brassbound's conversion』George Bernard Shaw,1899年。 バーナード・ショーによる戯曲。もちろんショー自身も著名な劇作家なのですが、本書が2014年になって復刊されたのは、翻訳者が松村みね子(片山廣子)であるという点に負うのでしょう。か…
岩波少年文庫のホラー・アンソロジー、フランス篇。「青ひげ」シャルル・ペロー(La Barbe bleue,Charles Perrault,1697)★★★☆☆ ――昔々あるところに、大金持ちの男がいた。男のひげは不気味な青色をしていたため、女たちは逃げ出さずにいられなかった。そ…
『Die Rreise mit der Zeitmashine』Egon Friedell,1946年。 ウェルズの「タイムマシン」後日譚です。 未来から戻り、過去に旅立ったまま戻って来なかったタイムトラベラーは、その後どうなったのか――? そのことが気になった語り手のエーゴン・フリーデル…
「Berliner Reiseerlebnis」Friedrich Freksa,1919年。 訳者後記によれば、江戸川乱歩との往復書簡のなかで小酒井不木が「白昼夢」(1925)に関連して言及している『プラシュナの秘密』(1920)の原型短篇です。なるほどそばかすや柔毛のあるマネキンは、乱…
『El Anticuario』Gustavo Faverón Patriau,2010年。 入院中の友人ダニエルが犯した(と称する)フリアナ殺しの謎を、友人で語り手でもあるグスタボがダニエルとの対話や古書会メンバーへの聞き込みを通して、真相に迫る(気があるんだかないんだか……)。 …
「第三巻まえがき」荒俣宏 ――今は忘れられた「愚作」も、当時は「時流に迎合した成功作」だった場合があるのだ。たとえば一〇〇年前には、そうした発掘で陽の目を見たのがレ・ファニュである。レ・ファニュほどの宝はもう望めないかもしれないが、まずは掘り…
『Julia and the Bazooka』Anna Kavan,1970年。「以前の住所」(The Old Address)★★★★☆ ――退院の荷物をまとめていると、シスターが入って来る。「患者所有物」と書いた封筒をわたしに差し出す。「お返ししなくちゃならない決まりなの」封筒の上から、慣れ…
オガツカヅオ待望の短篇集。主に『シンカン』に掲載された作品を中心に収録されています。扉をめくれば「これから特別に魔法をかけてやる」というエピグラフと、妖精のイラスト。「はじめましてロビンソン」(2011) ――漫画化のアシスタントをしているケイコ…
乱歩人形でおなじみの人形作家による、泉鏡花作品の絵本化。 灯ともしの翁が一人、社の階に立出づる。蒼ざめた小男が、柏手のかわりに痩せた胸を三度打った。「願いまっしゅ。……お晩でしゅ。」「和郎わの。」「国境の、水溜まりのものでございまっしゅ。」「…
『Who are you ?』Anna Kavan,1963年。 チャバラカッコウの鳴き声が「あなたは誰?《フー・アー・ユー?》」と繰り返される熱帯の地「白人の墓場」で、ドッグヘッドと呼ばれる支配的で乱暴な夫と、決して支配に屈しない若い妻と、情事未満を重ねるスエード…
『Reality and Dreams』Muriel Spark,1996年。 短篇集『バン、バン! はい死んだ』に続く、ミュリエル・スパーク作品です。今回は長篇。 撮影にこだわるあまりにクレーンから落下して大けが、妻は資産家の一族なのでわがままな仕事ぶりも思いのまま、女は芸…
『アフタヌーン』2018年1月号(講談社)『大上さんだだ漏れです。』14「オクトパス・ガーデン」吉田丸茂『しったかブリリア』5「ラブホテル」珈琲『おおきく振りかぶって』138「4市大会 9」ひぐちアサ『ヴィンランド・サガ』45「バルト海戦役 27」幸村誠『…
「第二巻まえがき 二〇世紀怪奇スクール――夢魔の花咲きほこる」荒俣宏 ★★★★★ ――そもそも、いったいだれが怪奇小説という大山脈に登ってみようと言いだしたのか。ラフカディオ・ハーンである。ところで、この「怪奇小説」なる用語はいつからこのジャンルの呼…
「生き屏風」★★☆☆☆ ――一昨年に亡くなった奥方の霊がその店の屏風に憑いたのか、夏の頃になると屏風が喋るようになった。無理に祓おうとするよりも適当な相手に慰めさせた方がよいと、妖鬼である皐月が呼ばれることになった。皐月は眠っていた馬の首の中から…
『A Scarcity of Love』Anna Kavan,1956年。 王族の血を引く両親のもとに生まれ、女王《リジャイナ》と名づけられた少女は、抑圧的な環境で育ったために、普通なら愛の対象に向けられる感情が自分の肉体に向けられた。自分だけの宝物である肉体を蹂躙した夫…
ルドルフ二世について書くために蒐集家の心理を取材しようと語り手が訪れたのは、プラハに住むマイセン磁器の蒐集家カスパール・ヨアヒム・ウッツだった――とくれば、蒐集についての偏執狂的な情熱とエピソードが語られるのだ、とばかり思っていました。とこ…
『Beide Sizilien』Alexander Lernet-Holenia,1942年。 買ってしばらく経ってから読んだので、著者が誰かなどすっかり忘れて確かめもせず、レオ・ペルッツの作品だと思い込んだまま読んでいました。著者はペルッツの後輩で友人でもある作家だそうです。 パ…
「影女房」★★★★☆ ――偏屈で通っている久馬のところに、女が通っているらしい。大堀進之介が久馬を訪れると、女の気配はあるのに姿はない。大堀は一計を案じて夜に訪れてみれば、女というのは辻斬りにあった織物問屋の娘。久馬の剣の腕を見込んで、仇を討って…
『St. Lusy's Home for Girly Raised by Wolves』Karen Russell,2006年。 魅力的なタイトルに、「エイミー・ベンダー、ジュディ・バドニッツ、ケリー・リンクに続く、新しい世代の書き手!」という書評。期待しない方がおかしい。 「アヴァ、鰐と格闘する」…
「まえがき」荒俣宏 平井呈一の思い出と、氏の海外怪奇文学の受容、本書の編纂意図、海外雑誌に見る怪奇小説の歴史、その日本受容史。 第I部 ドイツロマン派の大いなる影響:亡霊の騎士と妖怪の花嫁「レノーレ」ゴットフリート・アウグスト・ビュルガー/南…
トーベ・ヤンソン生誕100周年を機に邦訳刊行されたと思しき一冊です。 ヤンソン自体は好きなのですが、スナーク狩りの挿絵としては物足りなかったです。訳文も物足りないといえば物足りないのですが、キャロルファン向けではなくヤンソンファン向けの書物…
「鳥の人」オガツカヅオ ――リン太にバイトの手伝いを頼まれてごきげんなサジ。依頼人である女子高生のユキちゃんがリン太に甘えるのを見て気が気ではない。ユキは幼い頃にインコの卵を飲み込んでしまい、その卵がお腹のなかで孵化したと信じ込んで「トモちゃ…
「第七官界彷徨」(1931)★★★★★ ――よほど遠い過去のこと、秋から冬にかけての短い期間を、私は、変な家庭の一員としてすごした。そしてそのあいだに私はひとつの恋をしたようである。私はひとつ、人間の第七官にひびくような詩を書いてやりましょうという目…
ぼうっとしていて放っておけないけれど、マモルくんは間違いなく絵の天才だった。落ち葉の模様で彩られた動物殺しに興味を持つのはそのせいだろうか。「すっごい絵だった」マモルくんは落ち葉の形を「絵」と表現した。犯人はまだ捕まっていない。新興宗教や…
オバケがでると噂の学校の倉庫。ぼくはこわくない。だから一人で入ってやった。倉庫には、おんなのしろいあしが立っていた……。 やっぱりこの本も怖くなる前から絵が怖いです。 それはさておき。倉庫の暗がりを表現するために「くらい ゆうがた」を明るく描く…
怪談絵本シリーズ第二期の第一回配本。 怪異が始まる前から絵がすでに怖いです。わたしは絵本ファンではなく怪談ファンなので、つい文章や小説家の名前の方から入ってしまいますが、これはこれで、全ページ怖い絵本(絵で怖い絵本)なのだから、絵本としてま…
同じ別冊太陽『こわい絵本』の姉妹編で、「奇」「異」「怪」「妖」の各「あやしい」の四部構成になっています。「奇しい」『よしおくんがぎゅうにゅうをこぼしてしまったおはなし』及川賢治・竹内繭子は、こぼした牛乳が海となって広がってゆくという発想と…
「ゴメスを倒せ!」(1966.1.2)★★★☆☆ ――トンネルを工事していた作業員が錯乱して飛び出してきた。金峰山に伝わる絵図によれば、かつて地上にはリトラとゴメスという恒温動物が生息していたらしい。 ミステリーゾーンふうのナレーションにわくわくします。「…
大正・昭和篇に続き、明治篇にて完結。 今回の目玉は、きっちり百話ある『古今実説 幽霊一百題』(百蛇園主人 左右田秋満編)。しかもタイトルの通り幽霊譚ばかりです。※癩病の記述がある第五話だけ割愛だそうです。さすがに幽霊話ばかりじゃ因果話みたいな…
「Night Land Gallery 森環」沙月樹京「魔の図像学(7)フランシスコ・デ・ゴヤ」樋口ヒロユキ「安田均インタビュー 小説とゲームを結ぶ好奇心の魔術」牧原勝志 「妖術師の帰還」クラーク・アシュトン・スミス/植草昌実訳/藤原ヨウコウ画(The Return of t…